【更新中】キミの声、聞かせて

「ノートに書いて告白するなんて樹里しかいねーよな」


俺は樹里の頭を撫でながら話す


「でも、そんな樹里も好きだよ。この気持ちは変わってない」


樹里だから好きなんだ


樹里の笑顔は可愛い、接してみると楽しくて…


今まで接した女の中で1番安心出来た


「覚悟は出来てる。俺は樹里の傍に居てサポートしたい」


話せない樹里にしてあげられること、あるはずだから


樹里はゆっくりと顔を上げた


目を見て話そう


「話せなくて失った物もたくさんあると思う。だけど、それ以上に得た物も大きい。違うか?」


樹里は何かを言いたそう


《大翔の言うように失った物も大きいよ?だけど、得た物も大きい》


やっぱりそうなんだな
《大翔、好き。文字にしなきゃ言えない。声に出せなくてごめんね?》


「俺も樹里が好きだよ。こんな俺だけど付き合ってくれますか?」


樹里は笑顔で頷いてくれた


「やっと俺のものだ」


樹里のことは大切にしたい


《大翔は後悔しない?あたしで良いの?》


「樹里だから好きなの。声が出たらたくさん言葉にしてもらうから。ゆっくり頑張ろうな」


焦らなくて良い。


時間はたっぷりあるんだから


樹里を寝かせたまま俺は起き上がる


「樹里は寝てろ」


起き上がろうとしていた樹里を止めた


「顔色も良くないしキツかったら寝てて良い。俺は此処に居るから」


樹里は申し訳なさそうに頷くと素直に寝転がっていた


あんまり調子良くないんだな
----トントン


また、誰かが来たようだ


「はい、どうぞ」


話せない樹里の代わりに返事をする


「樹里、調子はどうだい?」


入って来たのは直樹さんと樹音だった


樹里は首を横に振った


大丈夫じゃないんだよな。


「直樹さん、話があるんですけど、良いですか?」


付き合いだしたこと話してた方が良いだろう


「樹音、ちょっと2人で留守番しててな。」


「うん、分かった」


樹里達を残し待合室に向かった


「話ってなんだい?」


「あの…樹里と付き合うことになりました」


直樹さんは驚いた顔をしたものの笑顔になった


「そっか。こうなることは分かってたよ。娘を宜しく頼むよ」


これで安心だな。
「樹里は抱え込むこと多くて頼ろうともしないんだ。樹音が産まれて話せなくなったら尚更。」


一呼吸して直樹さんは続けた


「だから、小さな異変にも気づいてあげて欲しい。君になら頼ろうとするだろう」


「分かりました。」


樹里のこともっと観察しなきゃだな


「改めて樹里のこと、宜しくな」


「樹里の声が出るように精一杯努力します。」


樹里のやりたいことをさせていこう


無理に連れ出しても楽しくないしな


「戻ろうか。2人を待たせてるから。」


俺たちは病室に戻った


「あれ、寝てる…」


2人とも並んで気持ちよさそうに眠っていた


「こう見たら、樹里と樹音って似てますね」


直樹さんと他愛のない話をして過ごした
頼れる人が出来た

君と過ごす日々は

あたしに光を

与えてくれた

君は温かくて優しい人

そんな君にあたしは

甘えてしまうんだ


***************


大翔と正式に付き合うことになってから数日


あたしは無事に退院出来た


お父さんや樹音と一緒に大翔も迎えに来てくれた。


あたし達が付き合いだしたこと、お父さんは知っていた


大翔が報告したみたい


退院したといっても捻挫は完治していない


車椅子が必要なほどでもないし歩くのが辛かったりするけど、歩かなきゃいけないから杖を使った生活だ


その都度、大翔や冬華がサポートしてくれている


学校では2人のサポートのおかげでかなり助かってるんだ


1番は大翔の支えが大きい。
大翔と付き合いだしたことを冬華に報告したら喜んでくれた


“やっと、信頼出来る人が出来たね”って…


冬華はあたしが人間不信なのも知ってる


だから、言ってくれるんだ


大翔も琴音達に報告したみたい


だから、今度会うことになった


めんどくさがりながら七瀬さんにも報告していた


“姉貴には報告したくないけど、言わなかったら後が怖い”とのこと


七瀬さん、優しいのにな。


「樹里、授業終わったけど?」


あっ、今は学校だった


考え事してて忘れてた


「また、意識飛ばしてたな。」


大翔にはバレてる…


「樹里の体調が良ければシュークリーム買って帰るか?」


付き合いだしてから大翔が更に優しくなった気がする
「大翔くんと寺田さん、付き合いだしたって。」


「大翔くんにはもっと似合う人、居るよねー。」


「なんで寺田さん何だろ?あの子話せないのに」


周りの女子達は言いたい放題


あたしが大翔と釣り合わないことくらい自分が1番わかってる


だけど、大翔は話せないあたしを理解してくれた人だもん


「ねぇ、お前らいつまで言ってんの?」


大翔が女子達を止めてくれた


「大翔くん、なんで寺田さんなの?可愛くないじゃん。寺田さん」


“可愛くない”なんて直接言われたら傷つく…


「樹里は可愛い。文句を言うお前らなんて可愛いなんて思わない」


大翔はあたしを抱きしめてくれた


その瞬間、奇声が上がる


この、場所に居たくない


「樹里、行こ」


大翔はあたしの手を引きこの場所から逃げ出してくれた
大翔が連れてきてくれたのは誰も居ない生徒玄関の隅っこ


此処は死角になっていて生徒達には見えない


荷物を置くと大翔は抱きしめて頭を撫でてくれた


「樹里、ごめんな?」


どうして大翔が謝るの?


女子達にあんな風に言ってくれて嬉しかったんだよ?


話せないからお礼も言えない


「俺には樹里だけだから」



大翔はあたしのおでこにキスを落とした


そういえば……


《ボードのペンのインクが無くなりそうなの》


書いたボードを見せた


「樹里の体調は大丈夫か?」


あたしは小さく頷いた


「じゃあ、買いに行こう。ついでにシュークリームもな」


大翔が居るなら大丈夫


あたし達はショッピングモールに向かった
ショッピングモールに着くと学生でごった返していた


学校帰りの溜まり場みたいだし仕方ないよね


「樹里、俺の手を離すなよ?」


あたしは小さく頷いた


「ペンを買いに行くついでに何個かボードを買っておこうな」


どうして?という意味を込めて首を傾けた


「家用、学校用、俺んち用。出掛ける時は小さなノートとペンがあれば良いしな」


大翔なりに考えてくれてるんだ


「持ち歩くのは良いけど場所取るだろ?」


……確かに。


「直樹さんには話してあるし明日も出掛けるだろ?だから必要なもの揃えよう」


そう、明日は平日だけど学校が休み


研修で休みなんだって。


周りの人は課題が出てるみたいだけど冬華のお父さんに許可を貰ってあたし達は出掛けられることになった