【更新中】キミの声、聞かせて

「書き終えたか」


《はい。いっぱい書いたから読むのに時間が掛かるかも》


「そのくらいは大丈夫だよ」


親父と樹里の会話の内容についていけない


「大翔、それ落とすなよ?大事なものだからな」


「分かってる」


「そのノートには意味がある。その意味は読んだら分かると思うよ」


……ノートに意味?


《ちゃんと最後まで読んでね?分かるから》


樹里に言われたら読むしかねーな


「ちゃんと読むよ。樹里、飲み物は?」


《コーヒー飲みたいけど、お茶で良い》


「分かった。親父は?」


「俺?ブラック」


聞くだけ聞いて売店に向かう


「あっ、大翔。」


向かう途中、誰かに声を掛けられた


それは冬華と上條だった
「冬華、上條。どうした?」


「“どうした?”じゃないよ!!樹里は?」


2人は樹里の様子を見に来たんだな。


「そんなに焦らなくても大丈夫。樹里なら病室に居るし、顔色も良くなってる」


それを聞いて安心する2人


「何か飲むか?奢るよ」


俺が“奢る”と言ってびっくりした表情をした


“お茶で良い”という2人にはお茶を買い樹里にはお茶とりんごジュースを買った


りんごジュースくらいなら飲んでも大丈夫だろう


2人を連れ病室に戻る


「ただいま。」


「お帰り。遅かったな」


《お帰り。ありがとう》


親父と樹里に出迎えられた


「樹里、お客さんだよ」


《あたしに?》


「うん。2人とも入って」


心配そうに冬華と上條が入ってくる
「樹里、大丈夫?」


樹里は冬華の顔を見た途端、涙を流した


「ごめんね。もう少し早く気付いてあげられてたらこんなことにはならなかったのにね」


涙声で話す冬華


「でも、良かった。無事で」


冬華は樹里を抱き締めていた


2人して泣いていた


「樹里、あのね。実夢が知らせてくれたんだよ」


落ち着いた頃、冬華が教えていた


《みゆちゃん、ありがとう》


「ほんと、無事で良かった。自己紹介するね。上條実夢です。仲良くしてね」


《寺田樹里です。宜しくね》


「実夢は悪い子じゃないから大丈夫。」


上條となら仲良くなれると思う


他愛のない話をして2人は帰って行った


《ノート、見てね?》


1人でゆっくりみよう


そして、知るんだ。


……ノートの意味を。
大翔*side

君の本音が聞けて
君との距離が
近づいた気がする
もっと、君を知りたい


樹里*side
話せない分
ノートに書く
君になら
本音が言えそうだ
優しい君と接して
もっと好きになる
君の本音が聞けて

嬉しいと思う

だって、それは

君のことを知れる

唯一の手段だから

***************


樹里がくれたノートの意味も知りたいけど、やっぱり樹里の傍に居たかった


ノートの意味は家に帰ってゆっくり知れば良いしな。


《大翔は帰らないの?》


「俺が帰ったら樹里は1人だそ?」


《それはヤダ》


樹里って人一倍、寂しがり屋なんだよな


「お前ら、俺のこと忘れてるだろ?」


そういえば、親父が居たんだった


忘れてた、完全に。


「2人の世界に入るな。樹里ちゃん、少しは動けそうかい?」


《ベッドばっかりは嫌です。ソファーに座りたい》


樹里は親父に書いたボードを見せてから寝転がっていた
「樹里、ソファーに座るか?親父、良いよな?」


「俺たちが居る間なら構わないよ」


「どうする?」


樹里は寝転がったまま動こうとしない


多分、こういう時は“本当は座りたい”って時


「ほら、おいで?」


と話しかけても動かない


「樹里ちゃん、甘えて良いんだよ。」


親父が言うと振り向いた


「大翔は君の役に立ちたいから。樹里ちゃんが甘えても文句は言わないよ」


親父の言葉に俺は頷く。


すると樹里はゆっくりと起き上がりこっちを向いた


やっぱり座りたいんだな


「最初から座りたいなら行動に移せば良いのに」


だけど、それを行動に出さず溜め込むのが樹里だ。


だから、少しの異変にも気付かなければならない
「俺はちょっと電話して来るね」


親父は樹里の頭を撫でてから出て行った


樹里のこと気に入ってる証拠だ


「樹里、大丈夫か?」


樹里は横に首を振った


「大丈夫じゃないな」


俺は樹里を抱き寄せる


「無理はするな。俺は樹里の傍に居るから」


《ほんと?》


「言ったろ?樹里のこと好きだからサポートしたいって。」


この気持ちは変わってない


「もう一度言うよ?俺の前では弱くなって良い。俺は怒らない。樹里のこともっと知りたいから」


だから、頼って欲しい


それだけ、樹里のことが好きなんだ


樹里は泣くだけだった


話せないから泣くしかないか。


だけど、樹里の涙は嬉し泣き


しばらくすると樹里は泣き疲れたのか眠っていた
無防備だな、コイツ


こんなところも可愛いけど。


樹里の些細な行動が俺を狂わせる


こんなに1人の女を好きになるなんて初めてだ


可愛らしい寝顔を見てると癒されるし愛おしくてたまらない


そんな樹里にキスを落とした


そして、起こさないようにベッドに寝かす


今はだいぶ落ち着いてるようだ


寝顔も安心してるように見えるし


パイプ椅子を持ってきて樹里の近くに座った


離れてるとこに居ると樹里が不安になるから


そうだ、ノートを読んでみよう


樹里、寝てるし此処で読んでも良いよな


何が書いてあるんだろうか。


悪いことでも書いてあるんだろうか。


考え出したらキリがない


不安になりながら、ゆっくりとノートを開く


そして、食い入るようにノートを読み始めた
大翔へ。


いきなりのことでびっくりしたよね?

ごめんね…

相馬先生(大翔のお父さん)に“書いてみたら?”って言われたの。


手紙やルーズリーフだとどの位の枚数になるか分からないのでノートに書くことにしました


長くなるかもしれないけど、最後まで読んでね?


まず…

こんなあたしに優しくしてくれてありがとう

こんなあたしと普通に接してくれてありがとう

傍に居てくれてありがとう

あたしのこと、“好き”って言ってくれてありがとう

ずっと、“ありがとう”って言いたかった

だけど、話せないから言えずにいたの

だから、ノートに書くことにしたんだ

此処になら本音を書けそうな気がするんだ。

だから、これからゆっくりと書いて行くね。