【更新中】キミの声、聞かせて

----翌日


樹里のことが気になってソワソワしている俺。


そんな俺を見て親父は笑っていた


「樹里ちゃんのとこ行くぞ」


親父と一緒に樹里の居る病院に向かう


「なんか、大翔の新しい一面が見れてるな」


「そうか?」


自分では分かんねーな。


「樹里ちゃんのこと、好きなんだろ?」


「好きだよ。まさかこんなに1人の女を好きになるなんて思ってなかったけどな。」


もう、親父に隠し事はしない


久しぶりに会えたんだ


たまにはこんな話をしても良いよな


他愛のない話をしていたら病院に着いた


-----トントン


ノックをしても返事はない


って、当たり前か。


寝てたら悪いからゆっくりと病室のドアを開けた
「樹里、おはよう」


----ビクッ


集中していたみたいで驚かせてしまった


《大翔、おはよ》


樹里はニコッと微笑んでくれた


「樹里ちゃん、調子はどうだい?」


《相馬先生、おはようございます。体調はぼちぼちです》


顔の腫れも引いてる気がする


「顔色もだいぶ良いみたいだね。」


《でも、熱があります》


「熱があるのに起きてて大丈夫なのか?」


俺は荷物を置きながら聞いた


《ちょっとくらい起きてても大丈夫だよ。大翔は心配性だね》


「そうそう。コイツは案外、心配性だよ」


親父まで樹里の味方か。


《あっ、大翔…これ》


樹里は紙袋を差し出した


《恥ずかしいから後で見て》


ちょっと覗いてみたらノートだった
「書き終えたか」


《はい。いっぱい書いたから読むのに時間が掛かるかも》


「そのくらいは大丈夫だよ」


親父と樹里の会話の内容についていけない


「大翔、それ落とすなよ?大事なものだからな」


「分かってる」


「そのノートには意味がある。その意味は読んだら分かると思うよ」


……ノートに意味?


《ちゃんと最後まで読んでね?分かるから》


樹里に言われたら読むしかねーな


「ちゃんと読むよ。樹里、飲み物は?」


《コーヒー飲みたいけど、お茶で良い》


「分かった。親父は?」


「俺?ブラック」


聞くだけ聞いて売店に向かう


「あっ、大翔。」


向かう途中、誰かに声を掛けられた


それは冬華と上條だった
「冬華、上條。どうした?」


「“どうした?”じゃないよ!!樹里は?」


2人は樹里の様子を見に来たんだな。


「そんなに焦らなくても大丈夫。樹里なら病室に居るし、顔色も良くなってる」


それを聞いて安心する2人


「何か飲むか?奢るよ」


俺が“奢る”と言ってびっくりした表情をした


“お茶で良い”という2人にはお茶を買い樹里にはお茶とりんごジュースを買った


りんごジュースくらいなら飲んでも大丈夫だろう


2人を連れ病室に戻る


「ただいま。」


「お帰り。遅かったな」


《お帰り。ありがとう》


親父と樹里に出迎えられた


「樹里、お客さんだよ」


《あたしに?》


「うん。2人とも入って」


心配そうに冬華と上條が入ってくる
「樹里、大丈夫?」


樹里は冬華の顔を見た途端、涙を流した


「ごめんね。もう少し早く気付いてあげられてたらこんなことにはならなかったのにね」


涙声で話す冬華


「でも、良かった。無事で」


冬華は樹里を抱き締めていた


2人して泣いていた


「樹里、あのね。実夢が知らせてくれたんだよ」


落ち着いた頃、冬華が教えていた


《みゆちゃん、ありがとう》


「ほんと、無事で良かった。自己紹介するね。上條実夢です。仲良くしてね」


《寺田樹里です。宜しくね》


「実夢は悪い子じゃないから大丈夫。」


上條となら仲良くなれると思う


他愛のない話をして2人は帰って行った


《ノート、見てね?》


1人でゆっくりみよう


そして、知るんだ。


……ノートの意味を。
大翔*side

君の本音が聞けて
君との距離が
近づいた気がする
もっと、君を知りたい


樹里*side
話せない分
ノートに書く
君になら
本音が言えそうだ
優しい君と接して
もっと好きになる
君の本音が聞けて

嬉しいと思う

だって、それは

君のことを知れる

唯一の手段だから

***************


樹里がくれたノートの意味も知りたいけど、やっぱり樹里の傍に居たかった


ノートの意味は家に帰ってゆっくり知れば良いしな。


《大翔は帰らないの?》


「俺が帰ったら樹里は1人だそ?」


《それはヤダ》


樹里って人一倍、寂しがり屋なんだよな


「お前ら、俺のこと忘れてるだろ?」


そういえば、親父が居たんだった


忘れてた、完全に。


「2人の世界に入るな。樹里ちゃん、少しは動けそうかい?」


《ベッドばっかりは嫌です。ソファーに座りたい》


樹里は親父に書いたボードを見せてから寝転がっていた
「樹里、ソファーに座るか?親父、良いよな?」


「俺たちが居る間なら構わないよ」


「どうする?」


樹里は寝転がったまま動こうとしない


多分、こういう時は“本当は座りたい”って時


「ほら、おいで?」


と話しかけても動かない


「樹里ちゃん、甘えて良いんだよ。」


親父が言うと振り向いた


「大翔は君の役に立ちたいから。樹里ちゃんが甘えても文句は言わないよ」


親父の言葉に俺は頷く。


すると樹里はゆっくりと起き上がりこっちを向いた


やっぱり座りたいんだな


「最初から座りたいなら行動に移せば良いのに」


だけど、それを行動に出さず溜め込むのが樹里だ。


だから、少しの異変にも気付かなければならない
「俺はちょっと電話して来るね」


親父は樹里の頭を撫でてから出て行った


樹里のこと気に入ってる証拠だ


「樹里、大丈夫か?」


樹里は横に首を振った


「大丈夫じゃないな」


俺は樹里を抱き寄せる


「無理はするな。俺は樹里の傍に居るから」


《ほんと?》


「言ったろ?樹里のこと好きだからサポートしたいって。」


この気持ちは変わってない


「もう一度言うよ?俺の前では弱くなって良い。俺は怒らない。樹里のこともっと知りたいから」


だから、頼って欲しい


それだけ、樹里のことが好きなんだ


樹里は泣くだけだった


話せないから泣くしかないか。


だけど、樹里の涙は嬉し泣き


しばらくすると樹里は泣き疲れたのか眠っていた