「今は泣け。辛かった分まで俺が受け止めるから」
いつも優しい大翔に助けられる
そんな大翔の優しさが嬉しくて思う存分泣いた
大翔は文句1つ言わないで泣かせてくれた
今までは心配掛けたくなくて泣けなかったのに…
この人の前だと弱い自分になる
「落ち着いたか?」
しばらくして大翔が声を掛けてくれた
あたしが泣いてる間、ずっと傍に居てくれて…
頭を撫でてくれた
それがまた嬉しくて、安心出来たんだ
「本当は抱きしめてあげたいけど…。それは樹里が元気になってからな」
あたしだって大翔にギュッとして欲しい
唯一、甘えられるのが大翔だけだから。
「今日はゆっくり休もうな。どうするかは明日考えれば良い」
大翔が居ることに安心して再び眠ることが出来た
----翌日
目が覚めると大翔の姿はなかった
何処に行ったのかな…?
学校でのことがフラッシュバックしてきて一気に不安になった
震えだって止まらない
「あっ、樹里。起きた?」
ビニール袋を提げた大翔が入って来た
大翔、居たんだ。
……良かった
「居なくなってごめんな。直樹さんが朝食を届けてくれたんだ」
だから、居なかったんだね
理由が分かったらホッとして震えも落ち着いてきた
「体調は…?」
昨日より全然マシだ
だから、ゆっくりと起き上がった
「起き上がれるなら体調が良いんだな」
あたしは小さく頷いた
《いっぱい迷惑掛けてごめんなさい。助けに来てくれてありがとう》
ずっとお礼が言いたかったんだ
「俺も遅くなってごめん。もっと早く気付けば良かった」
《ううん。来てくれて嬉しかった》
大翔が居なかったらあたしはずっとされるがままだったから
「樹里、ゆっくりで良い。無理して笑う必要ないから。」
その言葉を聞いて嬉しくなった
「樹里の気持ちが落ち着いてから話してな?」
話さないと前には進めないよね
「すぐにとは言わない。樹里が話してくれるまで待ってる」
大翔は優しすぎるよ…
それからは花蓮さんが運んでくれた朝食を食べた
半分くらいしか食べれなかったけど…
ゆっくり食べていけば良いよね
することなくて暇だなぁ
「欲しいものあったら言えよ?買ってくるから」
《良いよ。大翔に迷惑掛けちゃうから》
これ以上、迷惑掛けてられない
「俺は仮にも樹里の彼氏だろ?迷惑掛けて良いよ。出来ることはするから」
大翔はあたしの頭を撫でながら微笑んでくれた
こんな風に言ってくれる人、大翔が初めて。
「一方的にだけどさ、俺は樹里が好きなの。だから、樹里の役に立ちたいと思う」
----ドキッ…
こんな時に好きって言わないで
自分の気持ちが分からなくなる
だけど、嬉しいと思ってる自分が居る
「樹里ちゃん、顔が真っ赤になってるけど?」
ニヤッと微笑みながらあたしをからかう大翔
《意地悪しないで!!恥ずかしいよ。》
「だって、樹里の反応可愛いし。新鮮だから意地悪したくなる」
とサラッと言いのけた大翔
あたしの顔がますます真っ赤になったのは言うまでもない
大翔がからかってくれたおかげで…
七瀬さんや勝真君、冬華の過去に起きた面白い話をしてくれたおかげで…
気が紛れたしあっという間に時間が過ぎた
あたしには友達が居なかったからこんな話を聞くのも新鮮だった
----トントン
「はい、どうぞ」
返事が出来ないあたしの代わりに大翔が返事をしてくれた
「樹里、調子はどうかな?」
入って来たのはお父さんと樹音だった
「お姉ちゃん、おはよう」
元気良く挨拶してくれる樹音に心が和む
《体調、昨日よりはマシだよ。》
「そっか。良かった」
お父さんは安心したみたい
「樹音、おいで」
大翔は樹音を呼ぶと抱き上げていた
やっぱり男の子は力が強いな
樹音も嬉しそう
「樹音は軽いな。ちゃんと食ってるか?」
「うん!!食べてるよ。いつもおばあちゃんが作ってくれるの」
と楽しそうに話す樹音
それを嬉しそうに聞く大翔
2人が絵になる気がしてお父さんにカメラを取ってもらい写真を撮る
2人はあたしが写真を撮ったことに気づかないくらい話に熱中していた
「樹里、見せてみな」
お父さんに言われて見せてみる
「良く撮れてるな」
カメラは常日頃持ち歩いてるからこんな些細なことでも撮ることを忘れない
「樹里、何してんだ?」
《内緒》
と書いて笑った
「何だよ~。教えろ!!」
《やだ。教えない》
さっき、意地悪されたお返し
大翔は不服そうだが此処で止めた
これも思い出だもん
残しとかなきゃ。
後でアルバム作るし。
「樹里、なんか楽しそうだな」
《久しぶりに写真が撮れたから》
屋上でのことがあったから何もしたくないんだけど…
大翔と樹音のあの写真は撮って起きたかった
----トントン
また誰か来た
「はい、どうぞ」
次はお父さんが返事をしてくれた
すると七瀬さんと1人の男の人が入って来た
「樹里ちゃん、調子はどうかな?」
七瀬さんに聞かれ笑顔で頷いた
「大翔、久しぶり。元気そうだな」
大翔に話し掛けたと言うことは、もしかして…
「親父こそ元気そうだな。」
やっぱり、この人は七瀬さんと大翔のお父さんなんだね
雰囲気が七瀬さんに似てるかも…
「こっちが樹里で俺の隣に居るのが樹里のお父さんと樹里の妹」
大翔が紹介してくれて3人でお辞儀をした
「七瀬と大翔の父の相馬久志です。息子達がお世話になってます」
「樹里に用事があって来たんだろ?」
……あたしに?
「そうだ。七瀬、この子が好きそうなノートを2冊買ってきてくれ。」
ノートを何に使うんだろ。
「分かった。大翔、あんたは1回家に戻りなさい」
「此処に居ても良くないか?」
「着替えなさい。」
七瀬さんに言われて渋々帰る準備をする大翔
《大翔、樹音と一緒に居てあげて?》
お父さんはやることがあるはず
《お父さん、やることあるでしょ?》
あたしが書いた言葉に驚いたお父さん
忙しいからどうしようって考えてたみたい
「樹里には勝てないな。大翔くん、樹音の面倒、見ててもらって良いかい?仕事しなきゃいけないんだ」
「はい。良いですよ」
大翔は優しいな。
お父さん、夜中まで書類の整理してるみたいで忙しそう
前の職場よりも仕事は楽みたいだけどね
《大翔、樹音のこと宜しくね。樹音も言うこと聞いてね》
「おう。樹音、言うこと聞くよな?」
大翔の言葉に頷く樹音
「大翔くん、送ってくよ。」
「そうですか。ありがとうございます」
お父さんと大翔、なんだかんだいって仲が良い
「大翔、気をつけて帰りなさいよ」
七瀬さんは大翔のお父さんに言われたものを買いに行った
「俺たちも帰ろう」
「親父、樹里のこと頼んだ」
大翔はあたしの頭を撫でながら出て行った