「あんたには大翔じゃなくてこっちの方が良いよ」
その言葉の後、男子が2人出てきた
「大翔はあたしのモノなの。」
「城本が言ってたよりか可愛いじゃん。寺田さん、遊ぼーよ」
……いやっ!!これはヤバい
2人の男子が近づくと共に震えが止まらない
後ずさりするが壁に当たってしまった
今日に限って大翔からもらったモノ、教室に置いてきた
「ねぇ、俺らとキスしよっか?」
あたしの意志を聞かずに2人はキスをしてくる
叫びたくても叫べない
気持ち悪いよー!!
「可愛いよ、樹里ちゃん」
気安くあたしの名前を呼ばないで!!
制服はグチャグチャ、キスは続いてる
----大翔、助けて…
今更、気づいた
あたしの中での大翔の存在、大きいよ…
----うぅ…
「貴女にはそれが似合うわ。大翔に近づくから悪いのよ」
城本さんはあたしの身体を殴ったり蹴ったりしていた
おかげで動くことも出来ない
----気持ち悪い、呼吸も出来ない。
……苦しい
大翔、冬華…助けて
意識が朦朧としてきた
----ドンッ!!
鈍い音と共に屋上の扉が開いた
「樹里!!」
この声は…大翔だ!!
「お前ら、何やってんの?」
「えっ…あっ、これは」
今までにない低い声で城本さん達を圧倒させる大翔
あたしを見つけると一目散に近寄った来た
大翔を見た途端、安心して涙が零れる
「遅くなってごめんな」
来てくれただけでも嬉しいよ
そこであたしは意識を失った
俺に必要なのは
君がいること
君がいるだけで
世界が全然違うんだ
***************
お手洗いに行くと言った樹里が戻って来ない
普段の樹里ならすぐに戻って来て良いはずなのに。
「大翔、樹里と帰ったんじゃなかったの?」
職員室に行っていた冬華が戻って来た
「お手洗いに行って戻って来ないんだ」
……にしても、遅い
「冬華ちゃん!!大翔君!!」
俺らの名前を呼んだのは同じクラスのヤツ
「実夢。どうした?」
思い出した、コイツの名前は上條実夢(カミジョウミユ)
クラスの中でも大人しくいつも本を読んでる人
「樹里ちゃん、城本さんに連れて行かれるのを見たの!!」
……えっ?
嫌な予感がする。
「樹里はどっちに行った?」
「左に曲がったから屋上だと思う」
俺は屋上に向かった
屋上の扉を少し開けると襲われている樹里の姿
「ねぇ…大翔。あたし、見てられない」
冬華は相当ショックのようだった
「あたし、お父さんに知らせてくる」
「分かった。上條は担任を呼んで来て」
とりあえず、知らせるのも大切だから
----ドンッ!!
「樹里!!」
俺は樹里の名前を呼びながら突入する
案の定、驚いている城本達
「お前ら、何やってんの?」
「えっ…あっ、これは」
俺が来たことが信じられないようだ
「遅くなってごめんな」
樹里は涙を流し意識を失った
「樹里から離れろ」
「誰が離れるか!!」
男共は俺が来ても樹里から離れない
「意識失ってんだよ!!」
俺は男共を蹴り飛ばし樹里を守った
「ねぇ、大翔。どうしてそんな子と居るの?そんな子の相手ばっかりするの?」
「“そんな子”っていう扱いすんな。樹里なりに苦労してるんだよ。こうやってお前らがイジメるから尚更な」
「だからって話せない子の相手しなくても良いじゃない。あたしの相手もしてよ!!」
城本の相手するくらいなら樹里と居た方がマシ
「大翔!!大丈夫か?」
小牧が来たみたいだ
「俺は大丈夫です。樹里、連れて行くのでコイツ等のことお願いします」
俺は樹里を抱え込み足を進める
「俺は樹里以外考えらんねーから。この件でお前のこと興味すらなくなった。それだけは覚えてろ」
そう吐き捨て屋上を出た
屋上を出て誰も居ない空き教室に向かう
樹里の体中が腫れ上がってしまっている
見てるだけで痛々しい
「大翔!!」
冬華と校長がやってきた
「屋上は小牧に任せたよ。だから、連れてきた」
冬華は変わり果てた樹里を見て泣き出してしまった
「直樹には連絡したから。これからどうするか…」
「とりあえず、俺が連れて帰ります。」
「だけど、一旦病院に行った方が良い」
……そうだろうな。
「冬華、荷物持ってくれ」
「うん。分かった。実夢も一緒が良いよね」
なんて言っていると…
「校長先生、小牧先生が呼んでます」
上條が校長を呼びに来た
「あぁ。冬華、後で連絡くれ」
校長が屋上に行くのを見送り俺らも帰宅することにした
「樹里、目覚ますよね?」
冬華も不安なんだな…
「あたしがもう少し早く知らせてればこんなことにはならなかったよね」
上條も何処か申し訳なさそうだ
「大翔くん!!」
車から直樹さんが顔を出す
「忠彦から事情は聞いたから。病院に行くから乗って」
「はい。分かりました。2人とも、連絡するから此処までな」
冬華も上條も心配そうな顔をする
「冬華ちゃん、ちゃんと連絡するから今は待ってて。」
直樹さんの言葉に冬華は頷き上條と共に帰って行った
「直樹さん、ごめんなさい。俺、樹里を守れなかった」
今になって申し訳ない気持ちが押し寄せてきた
「大翔くん、自分を責めるのは止めろ。今は何も考えなくて良い」
それだけ告げると直樹さんは病院に車を走らせた
病院に着くと即、検査をすることになった
「前の学校でもこんなこと良くあったんだ。樹里が話せないからやってるみたいだけどね」
待合室で待ってる間、直樹さんが話してくれた
ターゲットにされやすいってことか。
「こんなに傷が酷いのは久しぶりだよ。」
直樹さんは悲しそうな顔をした
「寺田さん、娘さんの検査が終わりましたので診察室にどうぞ。」
看護師さんが呼びに来た
「良かったら大翔くんも一緒に入って。」
「良いんですか?」
家族でもないのに…
「俺、1人だと心細いんだ。それに説明する時、2人で聞いてた方が説明しやすい気がするし」
冬華と上條にも説明しなきゃだしな
不安な面持ちの中、直樹さんと一緒に説明を聞くことになった
看護師さんに案内され一つの診察室の前で止まった
「入って下さい。中でお待ちです」
促されるまま診察室に入ると年配の医師がいた
「お座り下さい」
直樹さんが椅子に座り俺はその後ろに立った
「娘は大丈夫なんでしょうか?」
「娘さんを検査した結果、命に別状はありません。骨折はありませんが捻挫と打撲があるのでしばらくは安静にしてた方が良いですね」
それを聞いた直樹さんは安堵の表情を見せた
骨折じゃなかったんだ。
……良かった。
「今は、寝てますので部屋に顔を出してみて下さい」
俺達はお辞儀をしてから診察室を出た
「ヒドくなくて安心したよ」
……それは俺もだ
冬華にも連絡しなきゃいけないな。