【更新中】キミの声、聞かせて

「小学校、何組だった?」


《1組だった。中学でも1組》


「あたし、小学校も中学校も6組だった」


あの学校、マンモス校だったから知らなくても当然だよね


「じゃあ、帰ってからアルバム見てみよ」


琴音が言った途端、息苦しさを覚えた


だんだん苦しさは増す


「樹里?大丈夫?」


琴音もあたしの異変に気付いたらしい


苦しい。上手く息が出来ない


うずくまるしかなかった


「「ただいま」」


大翔達が帰って来たみたい


大翔…たすけて。


「お帰り。良かった!!大翔…樹里が!!」


琴音の声に驚いた大翔が慌てて入ってきた


「樹里、大丈夫か?」


心配しながら自分も横たわるとあたしを抱きしめた
「焦らないでゆっくり呼吸しろ。安心して良い」


大翔に言われゆっくりと呼吸をする


背中をさすってくれていたから少しずつ落ち着いてきた


あたしは落ち着いた意味も込めて頷いた


《びっくりさせたよね。ごめん》


「樹里はこんなこと起きやすいんだ」


「びっくりしたぁ…。でも、落ち着いて良かったよ」


琴音には心配掛けちゃったな。


「あっ、樹里。さっきな、直樹さんに会って“樹里の気持ちが落ち着いてから帰って来い”って」


《お父さんに会ったの?》


「あぁ、だから、ご飯食べてお風呂入ってから帰ろう。ちゃんと送るからな」


連絡しなきゃいけないって思ってたから良かった


「樹里ちゃん、妹居たんだな。」


《亮介くん、樹音に会ったの?》


あたしがボードを見せると頷いた
「可愛かったよ。樹音ちゃん。」


「お前、“亮くん”って言われて喜んでたしな」


「大翔は“お兄ちゃん”って呼ばれてて羨ましい」


樹音、大翔のことは信頼してるもんな。


「樹音ちゃんに“お姉ちゃんを宜しくね”なんて言われてたし」


あたしが話せない分、しっかりしてるんだよね


樹音はまだ小学生なのに…


甘えたい時期なのに…


申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「樹里、もしかして樹音を想ってそんな顔してる?」


大翔には分かっちゃうみたい


「樹音は樹里が大好きだから心配してるんだよ。だから、そんな顔してると樹音が悲しむぞ」


大翔はあたしの頭を撫でてくれる


大翔に言われて少しは気持ちが楽になった気がするんだ
「樹里、今は何も考えなくて良い。」


「大翔が優しすぎる。」


「亮介、うるさい。久しぶりに会ったからって興奮しないで。」


琴音が呆れてる


「あっ、琴音。飯作って」


そういえば、一緒に作るって言ってた


あたしはゆっくりと起き上がる


「樹里、状況が状況だったから今はゆっくり休んで?また、一緒に作ろ」


琴音の言葉が嬉しくて頷いた


「大翔、キッチン借りるね」


「エプロン、姉貴のあるから使いな」


大翔は七瀬さんのエプロンを取ってきた


そのエプロンを受け取った琴音はキッチンに消えて行った


「樹里ちゃん、だいぶ落ち着いた?」


亮介くんの言葉に頷く


「大翔、今でも勉強してんのか?」


亮介くんの言葉の意味が分からない
「あぁ、じゃないと親父に怒られるからな。勉強って言ってもたいしたことじゃない」


あたしは訳が分からなくて首を傾げた


「樹里は知らなくて大丈夫。気にすることないよ」


“気にすることない”って言われても…


めっちゃ、気になる


「3人ともご飯出来たよ」


運ぶくらいは手伝わなきゃ


と思って立ち上がったけどまたもや大翔に止められた


「樹里は休んでろ。亮介がやるから」


「結局、俺かよ。」


なんて言いながらも琴音の手伝いをしている


2人、仲良くて良いな


羨ましい。


あたし、誰とも付き合ったことないしな


それに、話せないって知ったらみんな離れてく


みんな良いよね、話せて


考えれば考えるだけ虚しくなる
「樹里!!樹里!!」


……えっ?


「意識飛んでたな。飯、食うぞ」


そうだった。


目の前には美味しそうな和食が並んでいた


いただきます。と話せない分、手を合わせる


並んでいる分を少しずつ食べてみる


美味しい、率直にそう思った


3人は楽しそうに世間話をしている


あたしは話せないから黙々と食べるだけだった


《あたしが食器洗うね》


「樹里は良いよ。無理は良くないし休んでて。」

《でも…》


「樹里には落ち着き次第頑張ってもらうから今は休んでろ」


気にかけてくれる大翔の優しさが嬉しい


「体調を崩したばっかりなんだ。無理に頑張りすぎるのも良くない」


……そうだよね


周りが考えてくれてるんだ。


今はその言葉に甘えよう
「ねぇ、樹里。アドレス教えてよ」


と琴音に言われたので快く応じた


「樹里、俺にも教えて」


大翔のアドレスも知っといた方が良いよね


2人と赤外線を使って交換をする


今までこういうこと少なかったから嬉しいな。


「これでいつでも連絡出来るね」


琴音は嬉しそうだ


あたしも嬉しい


冬華以外の初めてのお友達


「大翔、終わったぞ。相変わらず、2人とも人使い荒いな」


なんて言いながらも雑用をこなす亮介くんは優しいね


皆が話してる間、あたしはお風呂に入った


「樹里、帰ってみるか?」


外を見ると暗くなっていた


帰らなきゃいけないか。


「樹里を送って来るから2人とも風呂入ってろ。変なもの漁るなよ」


大翔に荷物を持ってもらい家路に着いた
時々、悲しい顔を

見せる君を支えたい

せめて、一緒に

居る時だけは

笑って居てほしい

君の支えになりたい

***************


樹里を連れ帰宅中


もちろん、会話なんてない


話せない樹里はいったい何を考えているんだろうか


って、俺が詮索しても意味がないけど…


樹里にしか分からない葛藤があるはずだから。


「樹里。明日も学校終わってから出掛けような?」


樹里を見ると驚いた顔をした


「亮介が学校終わり次第合流しようって。」


《あたしも一緒で良いの?》


「もちろん。直樹さんには許可取ったから」


案外あっさり承諾してくれた


《家に帰るの怖い。もう少し一緒に居て》


と書いたボードを見せた樹里と公園に入った
公園に入ると誰も居なかった


荷物をベンチに置く


「樹里、座れば?」


と言ってみたが樹里は座りそうにない


その代わり、下を向いたままだ


俺は樹里を抱きしめた


樹里は小さく震えていた


「大丈夫。ゆっくりで良い。樹里が落ち着くまで一緒に居る」


樹里を1人にはしたくないから。


「樹里、顔上げて?」


俺は樹里にキスをした


案の定、樹里は驚いた顔をしている


「ごめん、俺が我慢出来なかった。」


伝えるなら今しかない


そんな直感が働いた


「樹里が好きだ」


この気持ちは抑えることなんて出来ない


「でも、樹里の返事はまだ聞かない。だけど、俺の気持ちは知っといて?」


樹里を抱きしめたまま話す


樹里は頷くだけだった