「琴音、良かったら樹里と仲良くしてやってな」
「もちろん。あたしで良かったら仲良くしてね、樹里ちゃん」
《樹里で良いよ。話せないだけで耳は正常なの。宜しくね》
「あたしのことも琴音って呼んでね」
なんか樹里と琴音は似てる気がする
「樹里、キツくなったら言えよ」
樹里は小さく頷いた
「そうと決まったら行こ」
「樹里、カゴ持って行けよ」
琴音は樹里の手を引き洋服を見に行ってしまった
「……ったく、琴音も変わってないな。」
「なぁ、大翔。これから用事あるか?」
「樹里の傷を癒すために此処に来てるし、樹里の気が済んだら帰るつもり」
「大翔の家に遊びに行って良いか?」
なんとなくそう言われる気がしたよ。
「別に良いけど…。でも、明日は学校だ」
今日は日曜日
「俺ら、明日は急きょ休みなんだ。大事な会議が入ったとか。だから、遠出したのもあるんだけどな」
「俺、学校だから相手出来ねーよ?それでも良いのか?」
休むわけにもいかねーし。
「大丈夫。俺と琴音はデートするから。気にしなくて良いし。放課後に合流しよう」
「俺、樹里を送らないといけない」
「樹里ちゃんも一緒で良いじゃん。それに好きなんだろ?樹里ちゃんのこと」
亮介は真剣な目をして言った
コイツには隠せないな。
俺は正直に頷くしかなかった
亮介には隠し事はしたくないから。
「やっぱりな。樹里ちゃんを見る大翔、優しい目してる。」
久しぶりに会ったのに鋭いな。
「女なんて鬱陶しかったのに樹里は違う。一目惚れなんだ」
「大翔もちゃんと恋したんだな。良かった」
コイツにはたくさん心配掛けた
「樹里ちゃん、良い子そうじゃん。おまけに可愛いし」
「樹里は良い人だよ。初めて会った時から“この子の役に立ちたい”って思った」
「樹里ちゃん、寂しそうな顔するよな。」
亮介も気づいたんだな
「樹里は話せない。人も信じないんだ。そんな樹里の支えになりたい」
弱いくせに強がりな樹里の支えになりたい
その為には樹里のことをもっと知らなければ…
「そう思うならちゃんと樹里ちゃんのこと見てやれよ」
「分かってる。今日、泊まるんだろ?日用品揃えなきゃだな」
まさか、こうなると思ってなくて何も準備してない
とりあえず、樹里達の元へ向かった
新しく出来た友達は
とても優しかった
こんなあたしを
文句一つ言わずに
受け入れてくれた
優しく可愛い人でした
***************
買い物をしていると大翔のお友達に会った
田嶋亮介くんと石垣琴音ちゃん
最初は怖くて大翔の後ろに隠れてた
そんな2人は大翔の中学の時の同級生なんだとか。
“信頼してるんだな”って大翔を見てるだけで分かった
自己紹介をしたのは良いけど“また文句を言われるんじゃないか”ってビクビクしてた
だけど、2人は文句一つ言わずに接してくれた
冬華以外では初めてだったから嬉しかったんだ
「樹里ならさ、どっち選ぶ?」
今は琴音と一緒に回ってるんだった
琴音が見せて来たのは白のブラウスとオレンジのブラウス
裾にレースがあしらわれていて可愛らしいデザインだ
あたしはオレンジのブラウスを指差した
白も可愛いけど、汚れたら目立つしね
「白ってさ、可愛いけど汚れると目立つよね」
《同じこと思ってた》
「ヘヘッ。そうなの?あたし達、似てるかもね」
琴音と仲良くなれるかな?
仲良くなりたいな…
「樹里、楽しんでるか?」
声がした方を見ると大翔と亮介くんが立っていた
《楽しいよ》
「そっか。良かったな」
大翔はあたしの頭を撫でる
「琴音、急きょ大翔の家に泊まることになったけど大丈夫か?」
「えっ、そうなの?親居ないし大丈夫だよ」
琴音達は大翔の家に泊まるらしい
「じゃあ、決定な。」
「大翔、お邪魔するよ。宜しくね」
お泊まりか…良いな
久しぶりに会ったんだもんね
語り明かすんだろうな
良いなぁ…羨ましい
「樹里?」
大翔の声で我に返る
「大丈夫か?」
あたしは心配掛けたくなくて笑顔で頷いた
「強がるな。本当は家に帰りたくないんだろ?」
図星をつかれ、俯くしかなかった
「樹里も一緒にお泊まりしよ?大勢の方が楽しいでしょ?」
琴音の言葉、嬉しい
だけど、辛い
《あたしは良いよ。遠慮しとく。お父さんにも心配掛けちゃうしさ》
お父さん、心配性だから。
それに、久しぶりの再会で3人で話すことたくさんあるだろうし。
あたしが居ちゃダメなんだ
「でも、樹里の日用品も揃えなきゃだな」
……えっ?
大翔の言葉に驚いて顔を上げた
「家に帰りたくなかったら俺の家にくれば良い。姉貴もしょっちゅう居るしな」
「そうと決まれば買いに行こう」
亮介くんの一言で買い物を再開した
「その前に支払いしなきゃだね」
「樹里、持つから支払いに行くぞ」
あたしの分のカゴは大翔が持ってくれた
そして支払いを終える
にしても、たくさん買い物したな…
引っ越して来るのに合わせていらないものは処分したし良いかな
洋服好きだし
「日用品買いに行こう」
あたし達は必要な日用品を買った
ほとんどの荷物を大翔に持たせてしまったな
なんだか申し訳ない
「樹里、具合悪いか?」
あっ、心配掛けちゃう
あたしは首を振った
「にしても、大翔が優しすぎる。」
「俺だって変わるんだよ。明日もあるし家でゆっくりしよう」
大翔はあたしに合わせてくれてるんだ
「樹里、前にも言ったろ?強がんな。弱くなれって。樹里が遠慮してんのはお見通しだからな」
「ゆっくりしようよ。長旅で歩き回って疲れた」
「じゃあ、コンビニでなんか買っていくか」
また、なにも食べずに過ごしてた
「樹里はなに食べたい?」
《ヨーグルト》
あたしはフルーツのたくさん入ったヨーグルトを選んだ
「亮介達も食べたいもの買っておけ」
それからは案外、早く買うものが決まって早々と帰宅した
「「お邪魔します」」
妙に緊張している2人
「お前ら、緊張しすぎ」
「だって、初めてじゃん。緊張もするよ」
あたしも最初は緊張したな。
あたしは真っ先に洗面所に行き手を洗った
「樹里、キツかったら横になって良いぞ」
あたしは小さく頷くと大翔のベッドに横たわった
フカフカで気持ちいい
「にしても、男の部屋にしては綺麗だな」
「お前の部屋が汚いだけだろ?」
「失礼な!!大翔には負けるけど俺も綺麗にしてるし。」
「ハハッ。2人とも変わってないね」
2人の会話を聞いて爆笑している琴音
「2人ともお茶で良いか?」
「「うん。ありがと」」
見事にハモってるし。
「樹里もお茶な」
あたしのこと分かってる。