「まさか、こんなところで会うなんて思ってもなかったな。」
「それは俺のセリフだって。亮介達、此処まで来るの時間掛かるじゃねーか」
2人が住んでるのは隣町だから。
「遠出のデートだよ。たまには違うところに行こうってなって…」
だから、此処に来たんだな
「此処のショッピングモール大きいから来たかったの」
「此処、結構品揃え良いしな。にしても、お前らまだ続いてたんだ」
「俺は琴音しか興味ないしな。」
言ってくれるじゃん、コイツ。
琴音を一途に思ってるしな。
すると服の裾を引っ張られた気がした
あっ、樹里のこと忘れてた
《楽しそうだね?その人達は誰なの?》
「樹里、ごめんな。」
俺は樹里の頭を撫でた
「この2人は中学の同級生だよ。」
樹里は小さく会釈した
「可愛い~!!さっきから気になってたの。この子は誰?」
やっぱり琴音は食いついたか。
「高校の同級生だよ。最近、転校してきたばっかりで案内してたんだ」
「もしかして大翔の彼女?」
亮介はニヤニヤして言い放った
「彼女じゃない。その前に自己紹介すれば?樹里、震えてるから教えてやれ」
さっきから小刻みに震えてるんだよな
「田嶋亮介です。大翔とは中学の同級生で良くつるんでたんだ」
「石垣琴音です。宜しくね。」
2人が自己紹介を終えると樹里はメモ帳にペンを走らせる
《寺田樹里です。訳あって話せないけど、宜しくね》
2人に書いたメモ帳を見せると微笑んでいた
「樹里、この2人は怖くないから大丈夫。心配することはない」
すると樹里は安心したのか震えが止まっていた
「樹里ちゃん?宜しくね」
琴音の言葉に樹里は頷いた
「にしても、大翔が女と居るなんて珍しいな」
「女は鬱陶しいけど樹里は特別」
樹里は媚びを売ることがなかった
話せないから仕方ないんだけど。
「ねぇ、大翔。樹里ちゃんと回って良い?」
「俺は良いけど、お前らは良いの?せっかくのデートだろ?」
2人の時間を削ることになる
「俺は良いよ。久しぶりに大翔に会えたしな」
俺も別に構わないけど。
問題は樹里だ
「樹里はどうする?」
《琴音ちゃんと仲良くなりたい。大翔が居てくれるなら大丈夫》
2人が悪いヤツじゃないって分かったんだな。
「琴音、良かったら樹里と仲良くしてやってな」
「もちろん。あたしで良かったら仲良くしてね、樹里ちゃん」
《樹里で良いよ。話せないだけで耳は正常なの。宜しくね》
「あたしのことも琴音って呼んでね」
なんか樹里と琴音は似てる気がする
「樹里、キツくなったら言えよ」
樹里は小さく頷いた
「そうと決まったら行こ」
「樹里、カゴ持って行けよ」
琴音は樹里の手を引き洋服を見に行ってしまった
「……ったく、琴音も変わってないな。」
「なぁ、大翔。これから用事あるか?」
「樹里の傷を癒すために此処に来てるし、樹里の気が済んだら帰るつもり」
「大翔の家に遊びに行って良いか?」
なんとなくそう言われる気がしたよ。
「別に良いけど…。でも、明日は学校だ」
今日は日曜日
「俺ら、明日は急きょ休みなんだ。大事な会議が入ったとか。だから、遠出したのもあるんだけどな」
「俺、学校だから相手出来ねーよ?それでも良いのか?」
休むわけにもいかねーし。
「大丈夫。俺と琴音はデートするから。気にしなくて良いし。放課後に合流しよう」
「俺、樹里を送らないといけない」
「樹里ちゃんも一緒で良いじゃん。それに好きなんだろ?樹里ちゃんのこと」
亮介は真剣な目をして言った
コイツには隠せないな。
俺は正直に頷くしかなかった
亮介には隠し事はしたくないから。
「やっぱりな。樹里ちゃんを見る大翔、優しい目してる。」
久しぶりに会ったのに鋭いな。
「女なんて鬱陶しかったのに樹里は違う。一目惚れなんだ」
「大翔もちゃんと恋したんだな。良かった」
コイツにはたくさん心配掛けた
「樹里ちゃん、良い子そうじゃん。おまけに可愛いし」
「樹里は良い人だよ。初めて会った時から“この子の役に立ちたい”って思った」
「樹里ちゃん、寂しそうな顔するよな。」
亮介も気づいたんだな
「樹里は話せない。人も信じないんだ。そんな樹里の支えになりたい」
弱いくせに強がりな樹里の支えになりたい
その為には樹里のことをもっと知らなければ…
「そう思うならちゃんと樹里ちゃんのこと見てやれよ」
「分かってる。今日、泊まるんだろ?日用品揃えなきゃだな」
まさか、こうなると思ってなくて何も準備してない
とりあえず、樹里達の元へ向かった
新しく出来た友達は
とても優しかった
こんなあたしを
文句一つ言わずに
受け入れてくれた
優しく可愛い人でした
***************
買い物をしていると大翔のお友達に会った
田嶋亮介くんと石垣琴音ちゃん
最初は怖くて大翔の後ろに隠れてた
そんな2人は大翔の中学の時の同級生なんだとか。
“信頼してるんだな”って大翔を見てるだけで分かった
自己紹介をしたのは良いけど“また文句を言われるんじゃないか”ってビクビクしてた
だけど、2人は文句一つ言わずに接してくれた
冬華以外では初めてだったから嬉しかったんだ
「樹里ならさ、どっち選ぶ?」
今は琴音と一緒に回ってるんだった
琴音が見せて来たのは白のブラウスとオレンジのブラウス
裾にレースがあしらわれていて可愛らしいデザインだ
あたしはオレンジのブラウスを指差した
白も可愛いけど、汚れたら目立つしね
「白ってさ、可愛いけど汚れると目立つよね」
《同じこと思ってた》
「ヘヘッ。そうなの?あたし達、似てるかもね」
琴音と仲良くなれるかな?
仲良くなりたいな…
「樹里、楽しんでるか?」
声がした方を見ると大翔と亮介くんが立っていた
《楽しいよ》
「そっか。良かったな」
大翔はあたしの頭を撫でる
「琴音、急きょ大翔の家に泊まることになったけど大丈夫か?」
「えっ、そうなの?親居ないし大丈夫だよ」
琴音達は大翔の家に泊まるらしい
「じゃあ、決定な。」
「大翔、お邪魔するよ。宜しくね」
お泊まりか…良いな
久しぶりに会ったんだもんね
語り明かすんだろうな
良いなぁ…羨ましい
「樹里?」
大翔の声で我に返る
「大丈夫か?」
あたしは心配掛けたくなくて笑顔で頷いた
「強がるな。本当は家に帰りたくないんだろ?」
図星をつかれ、俯くしかなかった
「樹里も一緒にお泊まりしよ?大勢の方が楽しいでしょ?」
琴音の言葉、嬉しい
だけど、辛い
《あたしは良いよ。遠慮しとく。お父さんにも心配掛けちゃうしさ》
お父さん、心配性だから。
それに、久しぶりの再会で3人で話すことたくさんあるだろうし。
あたしが居ちゃダメなんだ