餓鬼は引っ込んでろよ!!と、高い声で叫ぶこの人。
…折原さんの奥さんだ…。
「きゃああああっ!!何よ不法侵入!」
折原さんの腕に絡みつくお母さんを前に、女の人は狂ったように泣き叫んだ。
「私のっ…私の…まこ、と……返してっ…!!」
お母さんは顔を真っ赤にしながら、折原さんにしがみつき、何度も何度も私の誠さんよね?と繰り返していた。
「悪い、加奈。遅れてすまない。……別れよう?」
この立ちすくむ女の人を、彩は横目で見た。
髪がすごく乱れて、呼吸が荒くなっている。
「おい、何してんだよ……。」
いつの間に起きてたのか、お父さんは小さな声でそう呟き、お母さん達の後ろに立っていた。
彩は、ただリビングの真ん中で、涙を流すだけ。
出て行きたいけど、足が動かない。