怖くなって電話を切り、自分の部屋に戻った。

私の夫…?お母さん…?

「浮気…?」

ブルッと肩が震え、自然に涙が零れ堕ちた。
何がなんだか分からない。
お母さんは今仕事してるはず…、毎日遅くまで…。

「人違い、だよね…?」

そう簡単に信じられなくて、ベッドの上で声を殺して泣いた。
違う、違う、違う、と呪文のように唱えながら、そのまま眠りについてしまった。

「彩、起きて、彩!」

電気をつけ、時計を確認すると、夜中の2時すぎ。

「お母さんっ!!!」

ぎゅうっと抱き締めると、お母さんは優しく抱き締め返してくれた。
お母さんの服は普通にスーツでお化粧バッチリ。いつもの美人なままだった。

「あのね、彩、すごく怖い思いしたの、変なおばさんが私の夫を返せって!」

嗚咽まじりに話す私を、優しく撫でるお母さん。
微笑んでるのはわかるけど、何故か目が笑っていなかった気がする。