「何で知ってるの?って顔してるねぇ。」

クスッと彼女が微笑んだ瞬間、太陽が雲に隠れた気がした。

「手が止まってるよー?」

しおりを持つ俺の手を、折原は優しく叩いた。
あ、え、と戸惑う俺を見ては笑い、頬杖を立てて外を眺める。

「彩と私、家族なんだよね。」

「え?」

やっと声が出せたと思ったら、声が裏返ってしまった。
ゴクっと喉を鳴らす。

「小鳥の家って知ってる?」

首を傾げる俺を見て、折原は一瞬で冷たい目になった。

ガタッと、隣の椅子を出して、足を掛ける折原は、ゆっくりと口を開く。

「児童養護施設。」

一瞬、というか、時が止まった。
いや、でも、という単語が俺の頭を一斉に駆け巡る。

「並木くん、この事は秘密だよー?今から言う事、言わないでね?」

ふふ、と俺の唇に人差し指を添える折原。
正直、すげえ……怖い…。