夕方、チャイムがなった。よし、終わった。即、下校…とはできず、先生に呼び止められ、また話し合い。

「もう、私は走ることはできません。走る意味が無いから。頑張る目標がないから。だから、私は走れません。」

そう、先生に告げて、下駄箱に向かった。

玄関を出ると、外には元気な声。野球部の掛け声。テニス部のボールの運ぶ音。そして、陸上部のラップの声。

私は、逃げたんです。弱い自分だから。強くなりたいって願ったけれど、ダメだった。強くなりたい、そう、長い距離を走れる…傑みたいに…。

周りの、声も音も私にはただの雑音。青春なんて、誰が作ったんだろ。私はそれに苦しめられた。

「あぁ、泣きたい。」

そうやって、歩いてると、後ろの方からタッタッ…足音が聞こえる。そして、私の体を包んだ。

「おーかえり(笑)実樹ちゃん。」
「傑…」
私は、傑の笑顔が見れなかった。付き合っているっていっても、こんな彼女でいいのかなって。日本代表の彼女って、多分美人で、頭良くて、お料理できて、とっても明るくて…はぁひとつも当てはまらん。泣きたいわ。
「こら、また考えていたのか。悪い癖、悪い癖。実樹は、笑顔じゃないと。」
「私は、傑の力になってる?」
なんで、こんなこと言っちゃったんだろ。慌てて、取消そうとした。でも…
「実樹は、俺が頑張る目標だから。」
そう、呟く。そんな、優しくしないでよ…
でも、その気持ちは本当なんだろって思える。だって、傑の顔見てると、そんな気がしてくるから。
「さぁー寮まで、競争だ。」
そういって、走った。おいおい、日本代表に勝てるわけないだろ。って思っていても、私は傑の後ろ姿を見ているだけで、幸せなんだろうな。この幸せが、続けばいいよに。もう、あんな泣くような毎日は嫌だ。
笑顔で行きたいもの。

そして、寮についた。
あっ、そうです。私は実は…この寮に住んでます!この寮で、傑をはじめとする、陸上部のみんな(男子大学生だらけ(汗))と暮らしてます。実は、陸上部の監督さんの親戚で、ここで下宿させてもらっているのです。
いいでしょ~。っていいたいけど、結構大変ですよ。でも、楽しいけどね(笑)あっ、大丈夫です。女子は一人じゃないですから。ちゃーんと、監督の奥さんがいますから。それに、マネージャーさんも時々いますから。

変な心配は無用ですよ。

まあ、説明は、置いといて…着きました。寮に。

「じゃあ、俺練習行ってくるから。」
「うん、頑張って。」

そう言って、傑は練習に行った。私は、あなたの力になっているのでしょうか。私は、あなたが好きです。大好きです。でも、あなたの中に、私は写っているのでいるのでしょうか…

私は、ただ、傑の後ろ姿を見ているだけでした。