「喜嬉、手首痛くねぇ?」
「ん、大丈夫」
「靴下脱いでみ?」
ノソノソと靴下を脱ぐ喜嬉。
やっぱり足首も内出血してる。
アイツら許さねー。
マジぶりっ子とか俺ムリだし。
てか、喜嬉以外女じゃねぇ‼︎
「大丈夫だよ」
そう呟く喜嬉。
俺が仕返しすると思ってるな…。
あながち間違ってねぇけど。
「湊が隣に居てくれればイイ」
…喜嬉さん。
今の言葉めっちゃキタ‼︎
無意識でそんな言葉を言うからたちが悪い…。
一応俺も男だし、ずっと好きだったオンナと付き合えて舞い上がってるっつーか…。
このままだと手ぇ出しそう‼︎
「ちょ、喜嬉?何してんの⁈」
「何って。着替えてる」
俺が悶々と考えてるっつーのに、喜嬉は呑気に着替え始めた。
今までと変わらないことだけど、やっぱり関係が変わると今まで以上に意識しちまう。
「そこのジャージとって」
「お、おう」
下着姿でボケーッとしてる喜嬉。
見慣れた姿のはずなのに、やっぱり意識しちまう俺。
俺が異常?
違うよな、今までの『習慣』が間違ってたんだ。
確実に喜嬉の育て方間違った…。
男の前で平然と着替えたり、ベットに横になったり…。
今まで注意しなかった俺が悪いよな。
「なぁ喜嬉?」
「ん?」
「喜嬉が着替えるとき、俺部屋の外に出ようか?」
「なんで」
「一応俺も男だし?」
「別にイイ」
え、俺…男に見られてない⁉︎
告白されたけど…。
好きって言われたけど…。
どういうこと⁉︎
「湊ならイイ」
「はい?」
「湊は私が嫌がることしない」
「おう?」
「だから安心できるから」
「お、おう…そうだな。うん、でも、他の男の前で下着姿とかになっちゃダメだぞ⁇」
「私、湊とモモ以外と接触しない」
結局、喜嬉の言葉に騙されてるっていうか…。
振り回されてるっていうか…。
納得しちまう俺って…弱い?
でも、喜嬉が俺だけに懐いてくれてるのだと思うと、ヤバイ嬉しい。
自分を表現するのが苦手な喜嬉。
周りにあまり興味がナイ喜嬉。
実は寂しがりやの喜嬉。
俺だけが知ってる弱い喜嬉。
喜嬉が俺を好きっていう事実だけで、なんか満足かも…。
喜嬉だけはずっと隣に居てくれる。
過去も未来も現在も…
ずっと変わらないものがここにある。
なんてな‼︎
「ねぇ湊」
「どうした?」
「眠い」
言いながら既に半分寝てるし…‼︎
カワイイ寝顔は俺のもの。
俺の服をキュッと掴むこの手をずっと離さねぇ。
「………湊」
カワイイ寝言も俺のもの。
そこに一筋流れる雫。
…怖かったんだな。
閉じ込められて、縛られて。
怖くないわけナイのに。
それでも俺を信じて…。
そっと喜嬉の頭を撫でる。
「もう、誰にも傷つけさせないからな?」
そっとキスをして…。
「ずっと隣にいろよ?」
ただひたすらに君だけを想うから。
end.
湊と付き合い始めて約一ヶ月。
再びぶりっ子に呼び出された。
以前と違うのは、後ろに湊がいること。
また閉じ込められるのはゴメンだ。
だから湊を連れてきた。
訂正しよう。
湊が無理やりくっついて来た。
「あの…」
「何」
「その、えーと、あの‼︎喜嬉ちゃん‼︎」
「何」
ぶりっ子モジモジめんどくさい。
前はハッキリ言ってたのに。
あぁ、そうか。
後ろに湊がいるからブリブリしてるのか。
女子って大変だな。
「ごめんなさい‼︎」
何故?
謝られることをしたのだろうか。
そもそもぶりっ子とあまり関わりがナイ気がするが…。
「その…閉じ込めて…喜嬉ちゃんのこと傷つけたから…」
「別に大丈夫」
「え?」
「死んでないから大丈夫」
「え?そこ?」
「ん」
無事に湊と付き合えたし。
湊が隣に居るし。
だから、うん。
謝られる意味がわからない。
いつの間にか隣には湊が移動して来て。
「喜嬉はこういうやつだから。だから顔を上げなよ」
「でも…」
「いいから。な?」
「本当にごめん…」
そして去って行ったぶりっ子。
結局大した用ではなかったようだ。
「許せる喜嬉は偉いな」
「ん」
「うーん、イイ子‼︎」
わたしの頭を撫でる湊。
これが意外と落ち着く。
「あ!そうだ‼︎もうひとつ言っとく‼︎」
出て行った扉から、顔を出したぶりっ子。
…まだ居たのか。
「あたし、湊君のこと諦めないから‼︎正々堂々、勝負よ‼︎」
「ふーん」
「な、むかつく‼︎」
「………」
「精々あたしに取られないようにがんばりなさいよ‼︎」
「ん、ぶりっ子も頑張れ」
取られないように頑張るって、何を頑張れば良いのだろうか。
「ぶりっ子ってあたし⁉︎ってかこの状況だとあたししか居ないよね⁉︎」
「ん」
「認めるの⁇ちょ、マジないからソレ‼︎あたしの名前知ってるでしょ⁉︎」
「知らない」
湊とモモ以外の名前…多分1人もわからない。
クラスメイトの名前覚えたところで、私に何の得もない。
「サキ‼︎わかる?サ!キ!覚えておきなさいよ‼︎」
「ん…努力はする」
「じゃ、あまり教室でイチャイチャしないでね‼︎」
そしてまた、去って行ったぶりっ子。
騒がしい。
でも…。
ぶりっ子…サキは実はイイ奴なのかもしれない。
…しかし、イチャイチャって何だ?
「ねぇ湊」
「ん?どうした⁇」
「イチャイチャってどうするの?」
「俺と喜嬉が仲良しってコトを、周りの人に見せつけるんだ」
「ふーん」
イチャイチャ…。
今まで教室でしたことなんてナイ。
これからもそんなことしない。
「私イチャイチャしたくない」
「ん?」
「湊と私が仲良いのを、別に自慢しなくてもイイ」
「そっか」
「ん。仲良いのは事実だから、他人に教える必要ナイと思う」
「そうだな‼︎俺も教室でイチャイチャしたくね〜。喜嬉の声聞いて、喜嬉の笑顔見れるのは俺だけ」
…別にクラスメイトと、必要があれば話すこともあるけど。
でもまぁ、そこには触れないでおこう。
「よし、帰るか‼︎」
「ん、眠い。お昼寝したい」
「おい‼︎ここで寝るな‼︎俺ん家まで我慢しろぉ〜‼︎」
そんな声を聞きながら、瞼を閉じた。
フワフワとした意識の中…。
「ずっと俺だけの喜嬉でいてくれな?」
そんな愛しい人の声を聞きながら。
ずっと一緒。
ふたりって、イイよね。
湊とふたりって、イイよね。
end.
終わり方雑でごめんなさい。龍迅