…でも、当の本人が気付いていない時点でアウトなんだけどね。
「そう言えば、里莉は昨日どうして早退したの? 気分が悪かったら俺に言えよ! 家まで送ってやるから」
爽やか…と言った方がいいんだろうか…笑う先輩に心の底から呆れてしまった。
私がどれだけ嫌な思いをしているかなんて、先輩は理解してない。…理解しようとしてない。
「帰った後、スゴい噂が流れてきてさ~。俺、ビックリしたよ」
…やっぱり、口調を変えない先輩だったけど、さっき言った言葉が私には気になって、歩いていた足をピタリと止めてしまった。
「…里莉?」
「……何を…。何を聞いたんです?」
…その時だった…。
初めて、先輩の素の顔を見れた気がする。
目を見開いて、私を真っ直ぐに見つめ…そして、視線だけを逸らした。
「え~…? 何だったっけ?」
頭をかきながら、何か思案してるのが分かる。
…どうせ、いつもの事…。