「…なら、ここにサインを…」
兄さんに誘導されるがまま、私と先輩は婚姻届にサインしたり必要記入欄をウメていくだけ。
自分の名前を書く時、随分と緊張して手が震えていた。
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「…緊張してるのか?」
「…………は、はぃ…」
「…安心しろ。…俺も、緊張してる」
どこを見ても真っ白の壁や床。隣りを見れば、真っ黒の燕尾服を着た兄さんは、何度も深呼吸をする。
そして私は、真っ白の…女の子なら誰もが憧れるウエディングドレスを身に着けている。
高校の卒業式後、籍だけを入れた私と先輩…礼司さん(未だに慣れないよ…)…は、ようやく式を上げる決意をした。
…短大に入った私は、毎日が忙しくなり、礼司さんも、新人ながらも会社で責任ある仕事を任せられるようになったらしく、すれ違いが少しずつ始まった。