短大とは言え、櫻井家の名に恥じないように少しレベルの高い学校を選んだんだよ。


なのに、それなのに辞めなきゃダメなの? や、ヤダよ、そんなの!!



「…いや、学校は行けばイイ。籍を入れても通えるんだからな…」



「けど…」






思わず口答えしてしまった私は、息を飲んでそれ以上言葉が出ない。



だけど、私の口答えにも表情を変える事もせずに…でも、睨まれる事もなく、チラリとこちらを見ただけ…。



「…早く結婚したから幸せになると言う訳じゃない。逆も同じだ」


「………で? 何が言いたいのさ?」


「お前たちなら、幸せな生活が出来ると思っている」




キッパリと言った兄さんの顔を、私と先輩は凝視した。



「幸せになってくれ。…これが、親父の…お前への遺言だ」

「……でも…」



「お前を会社の繋がりとして、よく知らない男と結婚させるぐらいだったら樋高と結婚した方がマシだと俺は考えたんだ」





トントンと、婚姻届の用紙に指を軽く叩いた。




「里莉が、この家と血が繋がっているいないは関係なく、会社絡みの事でお前を巻き込みたくないだけだ」





切なそうに呟く兄さん。