「………櫻井。小宮山先生に相談されたんだけど…。樋高…、進路希望の紙を出してないらしいんだけど…。何か聞いてないか?」
「………え?」
何それ…。私、何も聞いてないよ…。
どうして?
「…一応、この学校って有名進学校だけど…。樋高の成績はいつも30位以内らしいから、そこそこのレベルの学校は目指せれるけど、早く希望出さないと行きたい学校も行けなくなるんだ…」
そんな事も知らない私は、すでに姿の見えなくなった先輩が出ていった扉を見つめた。
不安が胸をかき巡る。
…ねぇ、先輩…。あなたは、何を考えているの?
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進路指導室の前で、私は先輩の帰りを待つ。
防音がきいているから、中でどんな話をしているか分からない。
…もうそろそろ、本鈴がなる頃だけどまだ先輩は出て来る様子はなくて、不安になる。