………でも、心当たりがある事は確かだった。
左薬指の指輪。結婚しないと言っていた兄さん。香輝を跡を継いでもらうって言っていた。
…混乱してた頭が、急に落ち着いてきて整理が出来るようになった。
あの溺愛は父親と言うものだったのか…。
「結婚しないって、兄さんは言ってた…。そんな、理由があったなんて…」
…じゃあ…じゃあ、香輝のお母さんが自殺した理由は……何?
「…弟の母親が自殺した理由は…、兄貴と父親の間で揺れていたみたいだ。それが苦しくなったらしい…」
「……そうですか」
ユックリと返事をすれば、ストンと今までの事が簡単に受け入れられたような気がするのは気のせい?
全てが、繋がって理解する事に喜びをも感じて、抱き締められた先輩の背中に手を回す。…残念ながら、先輩が私の体をすっぽり隠せるようには出来ないけれども、抱き締めた。
先輩の心音が、私の耳に心地よく届く。
トクトク…。
響く音は、どこか懐かしく、涙が出てきそう…。