私をすがるように私を見つめ、悲しげな目をする。




「…たったあれだけで……、そんな事思ってた。でも、そんな事じゃなかった」



そう言ったきり、先輩は何も言わなくなって、自分の足許を見つめている。





「…先輩?」


「さっき、お前の兄貴と少し話しててさ…。ちょっと…ビックリした」



「……兄さんと?」





何の話をしたの? 尋ねたい言葉を飲み込んで、先輩の次の言葉を待つ。



深刻な話をしたのかな? それだけしか分からない。何の話をしたのかは分からない。






ど、どうしよう…。何だか、聞きたいようで聞きたくない…。


でも、兄さんが先輩に託すほど、何が重大な事を…。



「里莉、落ち着いて聞けよ? …俺もこれ聞いて、かなり言いづらいんだけど…」




「………………は、はい」







息がしづらい…。苦しい…。先輩の口から何を聞かされるのかが分からなくて、聞き逃さないようにするから、呼吸を極力控えてしまう。