「…あいつは、ずっとお前を見ていた…。最初は妹みたいな感覚だったんだろうな…。里莉、覚えてないだろう。お前が本家にいた頃、家に来た新堂の事…」
お、覚えてない…。…だってあの頃…、毎日必死に生きて…一生懸命に勉強して、お父さんと兄さんの顔色をずっと伺っていたもの。
「そんな事、知らなかった…」
「……やっぱりな。しばらくしてから、甘えに興味を持ち出した。あいつの性格を知ってる俺が、お膳立てしてやろう…とそう思ったんだけど…」
トンビにアブラアゲだな…。と苦笑していた。
「…わ、私…」
「気にするな。お前が気にした所で、どうしようもない。あいつはあいつで、解決する事だ」
でも…。と言いかけた私は、何も言えなくなった。何を言った所で、私は先生を受け入れられないもの。
「………はい…」
「…所で、香輝は何処に行った?」
「香輝なら、あっちで飛行機を見に行きましたよ」
「そうか…。そろそろ、時間だ。行くからな…。それと、樋高礼司からの伝言だ。展望デッキで待ってるそうだ」
「……分かりました」
頭の中に思い浮かんだ先輩の顔。罪悪感でイッパイになったままの気持ちで先輩にどんな顔をすればいいのかな?