スッと差し出された手は、砂混じりの髪についていた葉っぱを摘んだ。

「あぁ…ありがとうございます…」



真剣な顔で私を見ても、何も感じないんだけどな…。

「な~ん~だ~よぉ~…。顔を赤らめて『先輩、ステキ…』何て言えよ~!」


「…どの面下げて言うんですか…。私のキャラじゃないです」



先輩の目の前で大きな溜め息をわざとらしく吐いて、再び歩き出した。


「里莉。今日は『アレ』ないんなら、一緒に帰らねぇ?」

「…イヤって言っても、付いて来るんじゃないですか?」

満面の笑みで尋ねる先輩の顔に、私の中の何かが燻りだした…。


…けれど、この時の私には何も気付かなかった。



この時の私には、世間を…先輩を知ろうとしなかった。それが、私の不幸の始まりだとしても…。