妻が自殺した時も心のどこかで、楽になれてホッとしている自分がいた。
だが、親族たちは新たな妻を私に差し出した。
それが、香輝の母親だ。彼女もどこか弱々しく思えた。特に、子供が出来た時など、食欲をなくしてずっと部屋に籠るようになった。
自分の周りを片付ける事で精一杯だった私は、失いたくない人間を亡くした。それが、お前の母親だった。
ずっと親友の亡霊に取り付かれたように暮らしていた彼女は、お前の目の前で自殺をしたと聞いて、何も出来ない自分が酷く情けなく思えた。
あの日も、私が迎えに行こうとしたが急な会議が始まり、仕方なく歩望に全てを話して迎えに行ってもらうように頼んだ。
保護されたお前の姿を見て、あの時に無理言って取り上げていれば良かったと後悔した。
子供があんな骨と皮だけで、生きていられた事に喜びとともに後悔が残る。後悔が渦巻く中、親族の反対を押し切ってお前を引き取り、戸籍を与えた事で私は起こった事をなかったモノにしようとしていたのかもしれない。