「…あれ、嘘。ちゃんと、避妊したから…」
私に背を向けたまま、先輩は謝ってくれた。
お腹の中には、何もない…でもタダ一つ、聞きたい事があるけど何だが聞き辛い…。
「でも、もし俺が避妊してなくて、妊娠してもちゃんと面倒見る気はあったからな?」
「…え?」
少し恥ずかしそうに、私に笑いかける先輩の目だけは真剣そのものだった。
面倒って何? どう言う意味?
「俺な、中学生になったばかりの時に樋高礼子が自分の母親だって知らされた。叔母だって思ってた人がだぞ!? ショック受けて、一か月家出した」
ビックリした。だって、悩みなんて何にもないって思ってた先輩に、そんな事があったなんて…思ってもみなかった。
でも、誰もが悩みを抱えている。それを表に出している人と出してない人、その違い。
先輩は表に出していない…って、出せないもんね。
「それがきっかけで、女遊びをするようになった」
「…ヒドい……」