だって、聞いても辛くなるだけだもの…。



「そっか…。何も聞かないから、聞きたくないのかと思ってた…」




「聞いても…よく分かんないから」





私が想像している事と違う事を聞かされる事がイヤで、聞こうと思わない。



「それよりも、歩望さん…お前を香輝君の担当医と結婚て本当か?」


「……うん…。本当だよ」




覚悟を決めてそう言うと、太一君が深い溜め息を吐いた。






「…里莉……。樋高礼司のために…って言うんだったら、その結婚は…止めろ」



「え!?」




図星…と言うか、近い所を付かれてしまって私は、目を見開いて太一君を見た。





真剣な顔で私を見下ろしてタバコを一吸いしたかと思うと、おもむろに立ち上がって玄関の方に歩きだした。




「そんなの。幸せにならない!! 好きなんだろ? 樋高礼司の事」





「…す、好きだよ…。好きだけど…」






俯いて、自分の手を見ると父親が誰か分からない今、私は先輩には相応しくない…と頭の中でイッパイになっていた。