「いや、構わない」
仕事が一区切りついたらしい兄さんは、タバコを吸っていた。
お風呂場から出て新品のワンピースが脱衣所に置かれていた。真っ白にキレイなワンピースは、今の私には似合わない…。
けど、出されたモノを無下にも出来ず、恐る恐る袖を通してみる。…サイズはピッタリだけど、私には似合わない。
白色、無垢のイメージ。私はそんな事ない。正当な血を受け継いでいない時点で、私は…。
「少し腹に入れた方がいいだろう…。原田さんに頼んでサンドイッチを作ってもらった」
…櫻井家の本家に家政婦としている原田さんは、私も顔見知りで酷い状態で見つかった私を一番面倒を見てくれた人だ。
兄さんの向かい側のソファに座り、原田さんが作ってくれたサンドイッチを一つ掴み、一口食べる。口に広がるその懐かしい味に堪え切れずに、また涙を零した。
一つ、二つ…。
そこからは数え切れないぐらいに、泣いた。