「はぁ~…それにしても…まっさか、あいつが帰ってくるとはな~。計算違いだ」
「…あいつって、樋高礼子ですか? …先輩、ダメですよ。仮にも母親に…」
「お袋…何て言ってみろよ。大スキャンダルになるだろ。このままでいいんだって、人前じゃ礼子なんて言ったらヤベェ!」
苦笑しながら先輩は自分のジュースを飲み干してしまった。
その横顔を見つめながら、私はまだ先輩に言ってなかった事を思い出した。
いつ、打ち明ければいいのか分からなかった。
でも、言った所でどうする事も出来ない。
『俺を失望させるな』
…兄さんの言葉が耳から離れない。
失望させたくない。…けど、ほとんど何も知らない人の所に嫁いで行くのもイヤだ…。
先輩の側に…もう少しだけ側にいたい。