「…ごめん。もう分かるよな…。樋高礼子…本名、樋高あさみ。世間には言われてないけど、俺、あの人とは親子関係。一応、伯父夫婦の子供になってるけどな」
「………え?」
知らなかった。
私も人に自慢出来るような生まれだったけど、先輩もそんな生まれだったとは知らなかった。
一時期、恵まれた人間って思ってたから…。
「俺は、別にこの生まれが不幸だとは思ってないよ。まぁ、俺を孕んだ時は16の時だったけどな」
「そ、そんな時に…」
「相手は教師。今も交際してるかは不明」
何て言えばいいのか分からなくて、黙ってしまうしか出来なくって。
「ごめんなさい」
「…あやまんな。気にしてないから」
そう言って、また私を抱きよせた。暖かい先輩の腕の中が、心地良い。
ここにいれば嫌な事も何も聞かなくていい…そんな事まで思ってしまう。