それの目に引き寄せられるように、私は先輩の家に、自分の足で入っていった。
「……こっち」
「先輩の親は?」
「あ、あぁ。俺、片親なの。一昨日から家にいなくってさ」
「……そう、なんですか…」
何で? って、聞きたかったけど、こんな広いマンションに住んでるって事は、出張か何かかな? って、容易に想像が出来る。
靴を脱いで、私は先輩に導かれるまま、歩いて行く。
「…ここ、俺の部屋」
通された部屋は、真っ白に統一されて、清潔感が出ていた。
…意外。先輩のイメージでは、もう少し散らかっているものだって思っていたから。
ベッドと机、そして大手メーカーのコンポが床に置かれていた。
こんな広い…12畳以上ありそうな部屋に余りにも不釣り合い。
「何もないだろ?」
「はい…!? あ、いえ…その…」
「いいって…本当の事だし。好きに座ってていいから。飲み物持って来るから」
そう言って、私を部屋の中に押し込んで先輩は部屋を出て行った。
…先輩が何を考えているのかが、よく分からない。