「な、なんで私が先生の…」



「お前、新堂にも相応しいと思ったからだ」



「だからって…。先生とかなり年だって…。…第一、新堂先生だって私の事を…」




この家にきた時から薄々と分かっていたけど…、思ってたより展開が早くて置いて行かれているような気分。


………違う。置いて行かれるじゃなくて、どうにかして…兄さんが諦めてくれないかと願ってるんだ。


少し前までは、そんな事をあまり考えてなかった。

樋高先輩に会ってからだ。


私の中の感情が変化していって…先輩とご飯を食べる事が楽しくて…私の知らない事を少し自慢げに話す横顔が好きで…。


私は、先輩の事が好き…。

でも、先輩は私の事は何とも思ってなくて、ただの賭けの対象でしかない。



「…お前と一緒にいた男は、忘れろ。お前には相応しくない」


言われるだろうと思っていた言葉を冷たい視線とともに言われてしまい、私は何も言えなくなってしまう。





分かっていたけれど…兄さんは私の意見なんて、一度として聞いてくれなかった。


私が疎ましい存在だと理解した時から、櫻井家にあまり負担のかからないように…迷惑もかけないように、努めてきた。



15歳になったら出て行こうと、アパートも借りた。



もちろん、兄さんはイヤな顔をした。世間体が悪いと言う事だったんだろう…。