車から降りた私と兄さんは、二人並んで香輝の病室を目指す。
「香輝? 入るぞ」
「…お姉ちゃん!! お兄ちゃん!!」
久し振りに病室に入るなり香輝の笑顔を見れた事にホッとした。
けど病室には香輝以外の人がいて…。
「…葉月? 何でここにいるんだ?」
葉月…香輝の小学校の担任じゃない。兄さんの知り合いなの?
「久し振りです。先輩」
ニッコリと笑って頭を下げる先生と兄さんは高校か大学で一緒だったのかな?
「香輝の担任の名前が葉月って名前だとは聞いていたが、お前だったのか…」
「ご無沙汰してます」
「香輝。イイ子にしていたか?」
「お兄ちゃんに会えなくて寂しかったよ~」
香輝は、管の絡み付いた腕を懸命に延ばして、兄さんの上着の裾を掴んだ。
「そうか。俺も寂しかった。この間の発作は苦しかっただろう?」
「…もう大丈夫。……だけど、早く学校に行きたい…」
寂しそうな香輝の顔を見て、私はグッと込み上げてくるものがあった。