「じゃあ俺と付き合おう」
「……あっ、お家に弁当忘れた…最悪」
こいつのこういうフザケた口説き文句はいつものこと。でも本当に弁当忘れた。最悪。
「つれねぇなー」
「あんたに釣られてたまるか」
仕方ない、購買のパンを買ってお昼を済ませた。家にある誰にも食べられない今朝作ったお弁当を想いながらパンをかじった。
「お前って良く見たら可愛いよな」
「ありがと、そんな口説き文句じゃ誰も落ちないと思うよ川杉」
「本当に失礼なやつだよなお前って」
川杉の瞳がシュン、と寂しそうに揺れて肩を落として声のトーンが明らかに低くなる。
なんでこんなに分かりやすい奴もいるのに、ソウタは全く分かりにくい人。
「川杉さぁ、いい加減春のこと諦めれば?こんなに拒否ってんのに立ち向かえる川杉って凄いよ、あたしに惚れなよ」
あたしの隣に座ってた恵がゲラゲラ笑ってそう言う。おーい、圭人君が悲しむよ
「春のつれない所が良いんだよ」
なんじゃそりゃ。じゃあつれたらそれで終わりってこと?バ川杉め。
あたしがつれないのは単に他に好きな人がいるからであってーー川杉の事が嫌いとかそういうんじゃないけど。