「そうですわね」
宝子王輝。
彼が他の生徒と会話をする姿は、学園内ではほとんど見られない。
成績と容姿は完璧であるとの評判をよく耳にする。
だが同時に、その異常なほど気弱な態度やたどたどしい話し方が、彼の評判を落としているとも聞く。
本来ならば姫羅と同等の人気を得られただろうに……
もう、救いようのないレベルである。
「ケーキと買い物はまた今度だねぇ」
ぼそっと呟いた鈴を見て、王輝がびくっと肩を震わせた。
「す、すみません……白雪さん」
「いや、それ宝子が謝ることじゃないから」
「すみませんっ」
「だぁーかーらーっ!」
「鈴!もういいですわ! ケーキはまたにしましょう。楽しみにしています。
宝子さん、行きましょう」
教室にこれ以上いても、埒が明かないとでも思ったのだろう。
姫羅は、足早に教室を出た。
その様子を見て、王輝が慌てて後を追う。
一連の様子をぼーっと見ていた鈴は、深い溜息を落とした。