―――――2-C・宝子王輝さん、2-C・亜須賀姫羅さん。至急、乙戯花氏専用ルームへ来て下さい。繰り返します。……―――



独特の仰々しいチャイムの後に流れた言葉に、姫羅と鈴が目を細めた。



「専用ルームって、学園長室だよね?」


「えぇ」


「何でここまでピンポイントな呼び出し? 姫羅、何かやらかした?」



からかうように言った鈴を見ながら、姫羅がゆっくりと首を横に振った。


それに合わせるように、C組の教室内がさらに騒がしくなる。



乙戯花氏専用ルーム


所謂、学園長室に日頃から出入りをしているのは、乙戯花氏と私だけだ。



その部屋に生徒が……しかも、学園の姫が呼ばれたのだから、教室が騒がしくなるのも無理はない。



だが、生徒達が騒がしい理由はそれだけではない。



さらさらとした短い黒い髪。


メタリックな、細身の黒いフレームの眼鏡。



戸惑う姫羅の前に

騒がしさの原因であり、容姿端麗、成績優秀という肩書を持つもう1人の生徒、宝子王輝[ほしおうき]がゆっくりと近づいた。



「宝子、王輝さんですわね。先程の放送に、何か心当たりはございますか?」



入学当初から主席の座を守り続けている点、両親が有名な企業を経営しているという点では

彼も姫羅と同様、魅力的な生徒である。



「あっ……、亜須賀さん。
何故だかわかりませんが……、とりあえず!……専用ルームに、行きませんか?」