「鈴! 一緒に帰りませんこと?」



1日の授業が終わって騒がしくなり始めた教室に、凛とした声が響いた。



亜須賀姫羅[あすかきら]


乙戯学園・2年C組に所属する彼女の両親は、有名なレストランを経営する実力派だと聞いている。



容姿端麗。

成績優秀。

何事にも一生懸命で、強気なお嬢様。


“乙戯学園の姫”



彼女を知らない者がこの学園に存在しないと言っても、過言ではないだろう。



「そうだ!姫羅、ケーキでも食べに行かない? 最近、新しくオープンしたお店があるんだって!」


「素敵ですわね! あたくしも行ってみたいです」



姫羅の応えに、鈴はにっこりと微笑んだ。


少し色素の薄い髪が、それに合わせてさらりと揺れる。



姫羅の幼馴染である白雪鈴[しらゆきりん]は

『姫』に“普通”に接する、数少ないうちの1人でもある。