「後者?」


「安出泉の不調の原因が、メンタルの弱さのみでなかった場合のことです」


「それ、間違いなく面倒なパターンだな」



言い切る王輝を見て、姫羅は小さく息を落とした。



姫羅自身、面倒なことになるとは予想できていた。


だが、そうなることを望んでいないのも事実である。



王輝に同意されてしまうと、本当に後者になりそうで怖いですわ……。



「そう言えば、芝麻唯はどんな様子だったんだ?」


「あ、安出泉のご友人ですわね?」



王輝の言葉に、姫羅は思い出すようにぱっ、と顔を上げた。



安出と同様に水泳部員である芝麻を観察するのも、姫羅の担当である。



「残念ながら、特に目立つような行動はありませんでしたわ。それに、想像していたよりも、目立つ選手ではありませんでした」


「と、いうと?」


「水泳部員としてきちんと活動していらっしゃることには間違いないのですが、安出泉のように注目するべき成績も最近はないようです。
現在は、他の選手と大差ないのかもしれません」



姫羅の言葉に、王輝は溜息を吐いた。