「表向き?」
「あぁ。3-Aの奴から言われたよ。『宇率には気を付けた方がいい』ってな。
それに、府林透の見ていないところで笑顔を崩してるところも見た」
相変わらず、というべきか。
だが、先程までとは少々違う不機嫌なオーラが、王輝のまわりを漂っている。
「どういうことですの?」
「どういうこと……、だろうな」
「はい?」
呆れながらそう言うと、王輝はぐっ、とソファーに体重を落とした。
窮屈そうにつぶれたソファーが、今の王輝の心境を表しているようにも見える。
「宇率来女のような方を、八方美人とでも言うのでしょうか」
「ま、その類だろうな。いわゆる小悪魔というか……。まぁ、だまされる男がバカなんだけどな。
どっちにしても、面倒なことに変わりはない」
「ですが、まだ今の段階では、安出泉を追い詰めているものが何なのかはわかりませんわね……」
自身のメンタルの問題なのか。
それとも、何か外部からの圧力がかかっているのか。
「後者なら、面倒なことになるかもしれませんわ」