ミュージカルか何かか、これは。


両腕を大きく広げる乙戯花氏を見て、2人はぽかんとした表情を浮かべている。



「もう名前も考えてありますの!
乙戯学園秘密警美部員!通称はO‐Hi【王姫】! 素敵でしょう?」


「いや、あのー……いきなり僕達にそんなことを言われても……」


「王姫は、乙戯学園を悩ます問題を影で解決する秘密機関なのです。
学園を警備し、美しく保つ……それが王姫!」



王輝の言葉など耳に入れるつもりもないのか、乙戯花氏は艶やかに微笑んだ。



「もちろん、引き受けてくださいますね?」



静かで、それでいてはっきりとした力強い声が響く。



「無理ですわ! あたくしにはできません!!
大体、悩みを解決する機関なら、生徒会の意見箱もありますし……」


「あんな生ぬるいもの、何の役にも立ちませんわ」


「……な、生ぬるい。ですか」



乙戯花氏が、苦笑いをする王輝と姫羅にそっと笑みを見せる。


そのまま優雅に紅茶のカップを傾けると、彼女はまた口を開いた。



「生徒会ではダメなのです。必要なのは、あなた方の力。
過去最高点で学年トップの宝子さんと、2位の亜須賀さんに本気になっていただければ、皆を救うことができるはずです」


「で、ですが!」


「それにね、あなた方の名前を見てごらんなさい」



そう言って、乙戯花氏は右の手の平を顔の横ですっと天井へ向けた。


すかさずそこに、ピンクのメモ用紙とふわふわとした羽の付いたペンを差し出す。



満足そうに微笑むんだ乙戯花氏は、メモ用紙にさらさらと文字をつづった。