あまりにも一生懸命、外をみていたからだろうか。

駅に降り立ったとき、私は激しい頭痛に襲われた。

頭痛持ちなんかじゃないのに。


私はなんだか、運命に拒まれたような気がしたんだ。

元々歩くはずだった道を逸れて、魅惑的な路地に迷い込んだ私を。

無理矢理元の道へと導こうとするみたいな。

そんな頭痛だった―――



「はる、ほら、ここのバス停覚えておくのよ。」


「え?」



母が突然そんなことを言って、私は面食らった。

私は、オープンキャンパスに行っていい、という許可は貰った。

だけど、S大学を目指していいとは、言われていなかったから。



「もし受けにくるときのためよ。ここから乗って、S大学入り口で降りるの。」



考えてくれてるんだ―――

私は、感激して泣きそうになってしまった。

母は、もしかして、私のわがままを、許してくれるかもしれない……。



「あ、ほら、あそこに〇〇ホテルがあるでしょ?あそこなら、まだ予約が空いてるみたいだよ。」


「え?」


「入試直前だと、予約でいっぱいで、どこも泊めてくれないらしいよ。今の内から予約しておかないと。」



そんなこと、調べてくれていたの?

お母さん、もしかして、私をS大に行かせてくれるの?



嬉しくて嬉しくて。

でも、相変わらず頭痛は激しくて。

だけど、そんなこと忘れるくらい、嬉しかった。



頭痛薬をのもうとしたら、バスが来た。

タラップを上りながら、錠剤を口に入れようとしたら、それは私の手から離れて、タラップを下ってしまった。


あ、と思った。


ドアが閉まる直前に、錠剤はバスから降りるようにして消えた。

それを見て、私はなんだか、悲しい気持ちになった―――