そんなこんなで迎えた、高校最後の夏休み。

私は、何よりも楽しみにしていたことがあった。

それは、S大学のオープンキャンパスだ。


母に、来る日も来る日もお願いして、やっと行かせてもらえることになった。

母もついてくることが条件だったけど。


S大学は、私の夢、そのものだったんだ。


電車に乗って、その県まで行く道は、ずっと車窓から外を眺めていた。

県境は、どこだろうって、思いながら。


一番最初に見えるお茶畑、先生も知っている?


あまりにも幸せだった。

見える風景が、どんどん変わって行って。

ああ、ここが私の、第二の故郷になる。

そんな気がした。


それに、この景色は、先生の見ていた景色。

先生が吸った、空気。

先生が4年の月日を過ごしたこの場所に、今、私がいること。

それが、何よりも嬉しい。


でも、何でだろう。

心のどこかで私は、もう二度と来られないかもしれないと思っていた。

そんなの、考えたくもないけれど。


あまりにも、夢みたいだったから。

それは、目を閉じて見る夢に似ていて。

目が覚めたら、全部消えてしまうような、そんな、不確かな未来に思えたんだ―――