そして、月日は過ぎて。

3月になると、もうすぐ3年生だ。


川上先生が異動しちゃうんじゃないかって、心配で心配で。

何度も何度も、先生に尋ねたくらいだ。



「先生、異動しないでくださいね!」


「そんなの、俺はどうしようもない!」



そう言われても、言われても。

どうしても、先生にいなくなってほしくなくて。


先生が異動するかどうかは、離退任式の朝に新聞で発表されるまで分からない。

でも、それより前に、先生たちには知らされるらしい。

だから、3月の半ばになれば、もうみんな知っているらしかった。



「先生、異動じゃないですよね!」



その日も、質問に行った帰りに、しつこく訊いていたんだ。

すると……。



「異動じゃないよ。」


「えっ!!」


「これ、内緒な。」



新聞発表よりずっと前に、そう教えてくれた。

嬉しくて、涙が出そうになる。



「ほんとですかー!!」


「でも、俺が教科を持つかは分からないぞ。」


「いいんです、先生が異動じゃなければ。教科担任じゃなくても、先生に質問に来るし。」


「それは迷惑な話だな。」



そう言いながら、笑う先生。

嘘。

本当は、教科担任も先生じゃなきゃ困る。

だけど、先生は前に言ってくれたよね。

「俺が教える」って。


だから、異動さえなければ、先生は受け持ってくれるはずで。



「嬉しいー。」


「そんなに嬉しいか?」


「嬉しいに決まってるじゃないですか!」



駆け回りたいくらいのこの嬉しさ、先生に分かる?

先生は、ずっとにこにこしている私を、呆れたように笑って見ていたね。