しかも、話は思わぬ方向に進んでいった。


川上先生がS大出身、ってこと。

なぜか、母も知っていたんだ。


私を、そそのかしたのは、川上先生だって、決めつけて。

川上先生と私の関係を、疑った。


先生と私は、何もなかった。

本当に何もなかったんだよ。


私はね、誰かに甘えたかったんだ。

お父さんみたいに、すべてを受け止めてくれる人に。

私はただ、無邪気な子どもにすぎなかったんだ。


生まれて初めて、本当の夢を見付けたような気がした。

初めて、自由を手にした気がした。

それで、はしゃいで。

毎日が、楽しくて。


川上先生は、すべてを分かったうえで、私の隣にいてくれた。

お父さんみたいに、私のことを心配して、気遣って、担任から守ってくれた。

それだけだったんだよ―――



なのに。



母は言った。



「もう二度と、川上先生に近づくんじゃない」



って。


母の知り合いが高校にいるから、その言葉にそむいてもすぐばれるだろう。

何よりも、優しい川上先生がそんなふうに思われてしまったのが、悲しかった。