茶髪の男が立っていた。

「ひっ!ひえぇぇぇっ!
 もう出しませんっ!」

そいつは、焦って逃げて行った。

私は、安心した。
ガクッと崩れた。

怖くて怖くて…。
涙がどんどん頬を伝っていた。

「大丈夫か?」

コクリと頷いた私をポンポンと優しく撫でてくれた。
久しぶりに優しさを感じたからか、涙がとまらなかった。

私は、泣きながらも、

「あ、り…がとう…。」

「おう」

お礼を言った。
男にお礼を言うのは、何年ぶりだろうか…。

涙がとまらなくても、そんなどうでも良いような事をずっと考えていた。