──翌日。

シャッとカーテンの開けられ、窓が開かれる。
誰かがやってくれてるんだろう。

そして、その誰かが開けてくれた窓から小鳥のさえずりが聞こえてきて。

でも、目を開けるに開けられず。

ただ、寝ているフリをしているしかない。


そして、口に柔らかい感触を感じた。

これは…もしかしなくても…。

キス!?

驚いてパッと目を開くと…。


一ノ瀬翔が真ん前にいた。
ドンっと押しのけ、とっさに叫ぼうとしたが

「おかあぁ んぅっ。??」


?????

最初は何が起こったのか分からなかった。

でも、ドアップの一ノ瀬翔とスローモーションで動く一ノ瀬翔。
唇に残っている感触。

一つ一つが何が起こったのか物語っていた。

言葉が出なかった。


一ノ瀬翔はそんな奴だったのか?
誰にでも何回でもキスする奴だったのか?
そんな最低な奴だったのか?


そんな疑問と


嫌じゃない。
もっとしてよ。
もっと甘いのをちょーだいよ。


そんな気持ちが頭の中で入り混じっていた。

でも、もうしないでって気持ちも当然のようにある。

矛盾した感情で分かるのは……




“私は一ノ瀬翔が好き。”




自分の思いに気づくと、キスした事が恥ずかしくなった。

その恥ずかしさに負けて、パジャマのまま部屋を飛び出した。そして、玄関でその場にあったスニーカーをはいて、家を出た。

どこかへ行くつもりはなかったが、足どりは瑠佳の家へ向かっている。


そのまま、足に任せてどこかへ向かった。