「おっしゃー!もういっぽーん!」
「よーい、ゴー!!!」
「いいよーそのままー」
「あと二周ーファイトぉー!」
誰もいない教室。
届いてくるのは、朝練中の運動部の声。
あたしが見つめるのは、たった一人の、あの人。
「おぉ!!!林田、お前、タイム縮んでるぞ!やったな!」
にかっと、人懐っこい、朗らかな笑顔を浮かべたあの人。
その笑顔が向けられている、林田さんに嫉妬しちゃう。
「・・・・・・なんて。
ただの独りよがりだけど。」
ぽつりと呟いた。
あたしは今日も相変わらず馬鹿だ。
部活に入ってないっていうのに、朝早く登校して。
あの人を見るなんて。
―――分かってる、のに。