「ーーー疾風(はやて)!!」






自分の名を呼ぶ声を遠くに聞き、疾風は顔を上げた。






「おーい、疾風ー!?


どこにいるんだー!?」






「ここだ、ここだよ!


おい、氷見(ひみ)!!」






疾風は叫ぶと、声の聞こえてきたほうへと雪を掻き分けていく。




しばらく進むと、雪深い斜面を登ってくる氷見の姿が見えてきた。




半ば雪に埋もれている樹の幹をつかみながら斜面を下ってくる疾風に気づくと、氷見は手を上げた。






「おぅ、やっと見つけた、疾風」





「どうした。


まさか、玉梓(たまずさ)に何かあったのか」





「いや、違う………お前にお客さんだ」







氷見の答えを聞くと、疾風は大げさに目を丸くした。






「……………は?



客………こんな雪の時期に?」