見てみると、灯の手の中には、山苺の実があった。




「群雲、これ好きだろ」




「あっ、ああ、ありがとう」




「さっきの菓子のお返しだ」





灯は微かに笑い、再び、群雲を置いてすたすたと歩き出した。





(………本当に変わったやつだな)





群雲は深くため息をついた。



父から頼まれたとは言え、灯の面倒を見るのは、かなり骨が折れるのである。





(………でも、まぁ)





群雲は灯から渡された木苺に視線を落とし、くすくすと笑った。





(あいつの世話を焼けるのは、俺しかいないからな。

だから、付き合ってやるか!)





群雲は全速力で駆け出し、灯の背中を追いかけた。






【完】




本編



❇︎華月譚❇︎月ノ章 姫君と盗賊の恋物語




よかったら読んでみてください。

灯の成長後

無愛想な盗賊・灯と、奇天烈な姫君のお話です。