そのときふと、群雲は父の言葉を思い出した。





『灯の母親は、ふつうの人間ではなかった。

妖のような力を持っていたんだ。

とても素直で優しい子だったよ。


でも、皆がみんな、そんなふうに心根を見てくれるわけではない。


人とは違う見た目をしていて、人とは違う力を持っているというだけで、忌み嫌われてしまうこともあるんだ。

悲しいけどな。


だからお前は、灯を守ってやってくれ。

灯はああいう奴だから、自分が特殊だってことも自覚していないみたいだしな。


頼んだぞ、群雲』





その話をしたときの父は、いつになく寂しそうな表情を浮かべていた。