「今までは、黙って耐えるしかないと、自分の心を殺していたけれど。


沙霧宮さまの御文にあったでしょう?

嫌気が差したのなら、いつでも逃げ出したって良い、と。


それを見て、吹っ切れたの」





明子は明るい笑みを浮かべ、朝日宮を見つめ返した。





「こんなところ、もう捨ててしまいましょう。


そして、静かな清らかな世界へ行って、沙霧宮さまのために、お祈りしましょう。


この恐ろしい場所に巣食う魔に殺されてしまった、哀れなあの方のために………」




「…………はい」





朝日宮も、久々に晴れやかな笑みを浮かべた。







それから朝日宮は、父帝に対して、兼正の陰謀を暴く文を送った。




兼正は処罰を受けたものの、奥津宮は「何も知らなかった」を通し、罪には問われなかった。




それらを見届けて、朝日宮は母明子と共に宮中を出た。




そして、大好きだった兄の最期の場所となった白縫山の麓にある寺で、静かな修行の日々を送ったのだった。