しばし、兄弟は無言のまま睨み合っていた。




お互いに決して理解し合えないことなど、分かりすぎるほどに分かっていた。






「春宮の位………それに伴う権力。

それが、沙霧お兄さまを殺してまで、あなた方が手に入れたかったものでしょう」





朝日宮が沈黙を破り、静かな声音で言った。





「次は、私が邪魔になるのですね。

形勢が悪くなれば、私の命を奪うことも、あなた方は厭わないのでしょう」





奥津宮は押し黙り、何も答えなかった。





「私は、皇位など要りません。

血塗られた皇位に、何の価値があるのですか?


………そんなに欲しいのなら、あなたに差し上げます。

さぞや嬉しいでしょう?」





蔑むように言って、朝日宮はくるりと踵を返した。




そして、一度も振り返らなかった。