いつも大人しい弟皇子の、見たこともない厳しい目つきに、奥津宮は怯んだ。





「………お話は聞かせていただきました」





「………な……」





「図らずも盗み聞きをしてしまったことは、謝ります。

ですが………」





静かな、しかし激しい怒りを瞳に湛えて、朝日宮は兄をきつく睨んだ。





「ーーーあなたのことを軽蔑いたします。

あなたの祖父上どのも、軽蔑いたします」





奥津宮は不愉快そうに眉根を寄せた。





「生意気なことを言うな!

私を誰だと心得ている!」





怒号を受けても、朝日宮は表情ひとつ変えなかった。





「…………あなた方は、自らの望みを叶えるために、沙霧お兄さまを殺したのですよね。


あんなにもお優しい、貴い御方を、何の罪もないお兄さまを………」





怒りのあまり、朝日宮の声は震えていた。





「なぜ、そのような酷い仕打ちができるのですか。


ひと一人の命を奪うということの罪の重さが、なぜ分からないのですか!」